site.title

ルーラ政権=トランプ関税背景に戦略転換=大統領選見据え国家主義強調

2025年7月15日

シドニオ・パルメイラSecom長官とルーラ大統領(Foto: Marcelo Camargo/Agência Brasil)
シドニオ・パルメイラSecom長官とルーラ大統領(Foto: Marcelo Camargo/Agência Brasil)

 ルーラ政権(労働者党・PT)は、議会との対立や支持率低下を背景に、「団結と再建」という従来の融和的スローガンを廃止し、国家主権と特権批判を前面に掲げた広報戦略へとかじを切った。トランプ米大統領が対ブラジル関税の引き上げを発表するなど、外的要因も重なり、政権は26年の大統領選を見据えて対立路線を強化する構えだと13日付エスタード紙など(1)(2)が報じた。
 第3期ルーラ政権発足から2年半が経過し、政府は公式コミュニケーションの見直しに着手。背景には大統領府と中道勢力セントロンの度重なる対立があり、政権がセントロンの影響下にあるとの印象を払拭する狙いがある。新方針では、社会正義、特権排除、労働価値の重視が柱とされる。
 ルーラ氏はSNSで、「ブラジルはいかなる干渉も受け入れない主権国家だ」と強調し、新スローガン「主権国家、ブラジル」を提示。これは金融取引税(IOF)の増税に失敗し、与党系の一部政党が大統領令を阻止したことによる政権の求心力低下を受けた動きとみられる。最高裁への訴えも奏功せず、連立の脆弱さが露呈した。
 政府は現在、「特権維持こそが集団的繁栄への障害」とのメッセージ発信を強化しており、「富裕層対貧困層」の単純な構図を越え、中間層にも社会政策や融資制度が恩恵をもたらすことを訴えている。大統領府社会通信局(Secom)の方針で、閣僚らは「最大の敵は1%の富裕層に有利な不平等の仕組み」と繰り返し発言している。
 この戦略はSecomのシドニオ・パルメイラ長官が主導し、ルーラ氏の支持率低下を食い止める役割を担っている。だが、PTの支持基盤である北東部や低所得層でも離反が進む中、シドニオ氏は「私はあくまでも学術的な立場でこの職にあり、政治的な野心や権力欲はない」と自身の中立性を強調している。
 Secomは、Pix課税のデマから閣僚に関する論争、SNS攻撃まで、12件以上の広報危機に直面。所得税の免除枠を月額5千レまで拡大することを掲げた最近のキャンペーンは、億万長者(Bilionários)、銀行(Bancos)、賭博業界(Bets)への課税強化を意味する略称「BBB」と非公式に名付けられ、世論調査でも一定の支持を得ている。ジェラルド・アルキミン副大統(ブラジル社会党・PSB)は、「シドニオは経験と洞察を持ち、さらなる成果が期待できる」と評価する。
 一方、SecomがSNS上で議員らを批判し、「既得権益の温床たる国会」と表現した投稿は、与野党を問わず反発を招いた。とりわけ、ウゴ・モッタ下院議長(共和者・RP)は強い不快感を示し、シドニオ氏に議会での説明を求めたが、出席は8月に延期された。
 また、シドニオ氏はPixを利用した取引監視に関する国税庁の規則を巡ってフェルナンド・ハダジ財相(PT)と対立。SNS上の反発と誤情報の拡散により、同措置は撤回された。中でも、ニコラス・フェレイラ下議(自由党・PL)による虚偽を含む動画は2億回以上再生され、方針転換に影響を与えた。
 新スローガンは、トランプ氏がブラジル産品に50%の関税を課すと発表したことに対する対応でもあり、ナショナリズム色を帯びた内容となる見通しだ。ルーラ氏は「ブラジルはブラジル人のもの」と記された帽子を再び掲げ、強硬姿勢を示している。
 政権の後半期に入り、政府はより明確かつ対立的な言説を模索している。新スローガンは、第1期の総括と26年選挙への分岐点となることが期待されている。


ジュリアナ氏=最初の転落から32時間生存=2度目の落下後10分間苦悶前の記事 ジュリアナ氏=最初の転落から32時間生存=2度目の落下後10分間苦悶最高裁長官=トランプ関税に反論書簡=「不正確な理解に基づく」次の記事最高裁長官=トランプ関税に反論書簡=「不正確な理解に基づく」
Loading...