【28日の市況・速報】Ibovespa、史上初の14万2千ポイント突破/利下げ観測と選挙動向が市場心理を改善/治安当局の摘発が企業株価を押し上げ
金融株堅調と治安当局の大型摘発、米国経済指標も追い風に
ブラジル株式市場の代表的株価指数である Ibovespa(イボベスパ) が8月28日、取引中に 史上初めて14万2千ポイントを突破 した。終値は1.32%高の14万1,041ポイントとなり、過去最高値を更新する場面もあった。背景には、金融株の上昇に加え、燃料業界に絡む大規模な犯罪組織摘発が特定企業の株価を押し上げたこと、さらに米国の経済指標や利下げ観測によるリスク選好の高まりがある。

金融株主導で指数上昇、治安当局の摘発が企業株価を押し上げ
この日の市場では、銀行や保険など金融セクターの堅調な動きが全体をけん引した。加えて、燃料業界に対する治安当局の大規模作戦「カーボノ・オクルト(隠された炭素)」が実施され、ウルトラパール(UGPA3)、ビブラ(VBBR3)、ライゼン(RAIZ4) など関連銘柄が買われた。
同作戦は、麻薬組織「PCC(第一首都コマンド)」による燃料流通網を使った大規模な資金洗浄を摘発したもので、1,400人規模の当局が動員された。投資家の間では「治安強化は企業経営の透明性向上につながる」との見方も強まり、株価の追い風となった。
利下げ観測と選挙動向が市場心理を改善
市場関係者によれば、今回の上昇は 利下げ期待と政治動向 が複合的に作用した結果だ。
米国では9月の連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ開始観測が強まり、ブラジル国内でも早ければ12月に利下げが始まるとの見方が浮上している。ドム・インベスチメント社のアナリスト、アリソン・コレイア氏は「インフレ指標の改善と景気動向が利下げの可能性を後押ししている」と指摘。これにより、株式を中心としたリスク資産への投資魅力が高まっているという。
さらに、最新の世論調査で サンパウロ州知事タルシジオ・デ・フレイタス氏(共和党) が大統領選の支持率で現職ルーラ大統領を上回ったことも市場心理を刺激した。デイコバル証券のアナリスト、ガブリエル・モーロ氏は「選挙ラリーが始まった。タルシジオ氏が優位に立つ調査結果は、市場にとって好感材料」と語る。
米国市場も最高値、Nvidia決算とGDPが材料
ブラジル市場の追い風となったのは国外要因もある。米国では S&P500指数が6,500ポイントを突破 し過去最高を更新した。半導体大手Nvidiaの決算はデータセンター部門の売上が予想をやや下回ったものの、全体として成長が続くと評価され、株価指数を押し上げた。
さらに米商務省が発表した 2025年第2四半期のGDP改定値 は予想を上回る結果となり、米国経済が高金利下でも堅調に推移していることを示した。これにより「景気後退は回避可能」との見方が強まりつつある。FRBによる9月の利下げ観測は依然として優勢で、ブラジル市場にも資金流入の期待が広がっている。
ブラジル政府、対米摩擦回避へメキシコ接近
一方で、通商分野では不確実性も残る。米国のトランプ政権が打ち出した関税強化政策により、ブラジル産品の輸出は逆風に直面している。このためブラジル政府は メキシコとの関係強化 を模索。アルキミン副大統領が率いる大規模な経済使節団がメキシコを訪問し、ブラジル産牛肉の輸入枠拡大など具体的成果を得た。
同様に、インドもロシア産原油の輸入を拡大するなど、自国に有利な条件を模索している。ブラジルも「対米対立の回避」と「市場多角化」の両立を模索しており、投資家の注目を集めている。
建設株、金利低下局面で過去に大幅上昇
金利動向は特に建設株に敏感に反映される。証券会社リコのアナリスト、ブルナ・セネ氏が実施した調査によれば、過去の利下げ局面では建設関連株が大幅に上昇した。
2005年の利下げ後12カ月間で建設株は平均161.7%上昇し、2009年には246.4%の高騰を記録。2011年や2016年の局面では上昇幅は限定的だったものの、それでも二桁の伸びを示した。一方、2023年の局面では株価が下落しており、利下げ効果が必ずしも保証されるわけではないことも示された。
犯罪組織PCC、燃料業界に浸透
株価に直接影響した要因の一つが、犯罪組織PCCによる燃料業界への浸透 を摘発した「カーボノ・オクルト作戦」である。
当局によると、PCCは40以上の投資ファンドを支配し、3兆円規模に相当する資金を運用。製油所や輸送業者、不動産などにも投資を広げていた。約1,000のガソリンスタンドを利用した資金洗浄は総額52億レアル(約1兆6千億円)に達し、複雑な金融取引を駆使していたという。
法務省のリカルド・レワンドフスキ大臣は「組織犯罪が合法経済に浸透する動きを長年追跡してきた」と強調。今回の摘発で、当局は46億レアル相当の資産を凍結した。
フェイクニュースが監視を妨害
当局はまた、金融監視の弱体化が犯罪資金の温床となった とも指摘する。今年初め、与党への反発を背景に「Pix(即時送金システム)課税」の誤情報が拡散し、規制強化案が撤回された。結果的に犯罪組織がフィンテック経由で資金を隠匿する余地を広げたという。
ブラジル歳入庁のアンドレア・コスタ・シャベス副長官は「政治的圧力で監視体制が後退したことが、犯罪組織に資金洗浄の余地を与えた」と述べた。
サベリン氏、ブラジル富豪ランキング首位を維持
経済面では明るい話題もあった。米Facebookの共同創業者 エドゥアルド・サベリン氏 が、フォーブス誌の「ブラジル富豪ランキング」で2年連続の首位に立った。推定資産は2,270億レアルで、2位のヴィッキー・サフラ氏一家を大きく引き離している。
サベリン氏はサンパウロ出身で、現在はシンガポール在住。2012年には米国籍を放棄し、アジアで事業活動を展開している。祖父は子供服ブランド「Tip Top」を創業した起業家であり、家系としての事業精神が受け継がれている。
▪️市場の先行き:利下げと政治リスクの両睨み
今回のIbovespaの史上最高値更新は、利下げ期待、治安改善、政治情勢 が重なった結果といえる。今後について、ドム・インベスチメントのコレイア氏は「米国の9月利下げが確定的になれば外国資本の流入が加速する」と見通す一方、「ブラジル国内ではボルソナロ前大統領の裁判結果が米国との関係に影響を与える可能性がある」と警戒も示した。
経済環境は追い風が強まる一方で、政治リスクの影響も無視できない。株式市場は好調を維持しているが、その持続性は 政策決定と国際情勢のバランス にかかっている。