COP30=超大型客船2隻投入で対策=交通混雑と環境影響に懸念

【既報関連】第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)期間中の宿泊料金高騰問題を回避するため、連邦政府は緊急措置として2隻の国際クルーズ船を契約し、計6千床の宿泊施設を確保した。だが、これら船舶はベレン市中心部の会議場から約20キロも離れた港に係留される予定で、参加者は陸路で移動する際、狭い道路など不十分なアクセス問題に直面すると予想される。政府は約1億8千万レ(約49億1220万円)を投じて港の埠頭整備や斜張橋の完成を進めているが、専門家は交通混雑や環境負荷への懸念を示すとともに、地域住民の生活や周辺観光地への影響についても問題視していると24日付G1など(1)(2)が報じた。
政府が契約したのは、豪華客船MSCシービュー号とコスタ・ディアデマ号で、合計約3900室の客室を有し、6千人超の収容能力を持つ。MSCシービュー号は、2018年就航のSeasideクラスに属するクルーズ客船だ。総トン数約15万3500トン、全長約323メートル、乗客定員は約5100人、乗組員は約1400人。国際的に見ても「メガシップ(超大型客船)」のカテゴリーに入る。
コスタ・ディアデマは、イタリアのコスタ・クルーズ社が運航する客船で、同社のフラッグシップとして2014年に就航。総トン数は約13万2500トン、全長は約306メートル、旅客定員は約4900人、乗組員は約1250人で、前者よりやや小さ目だがメガシップ(超大型客船)の範疇に近い大型船だ。
この超大型客船2隻が、アマゾン川河口近くの小さなオウテイロ港に停泊することになる。これまで同港は貨物(バルク・一般貨物)を扱う港として利用され、クルーズ客船の本格的な寄港実績はなく、観光客受け入れのための入国管理・税関など設備も整っていない。
同港は、市中心部の公式会場「パルケ・ダ・シダーデ」から約20キロ離れたカラタテウア島に位置し、周辺の道路は狭く、インフラも不十分。これにより、会議参加者が宿泊施設からまで陸路で移動する際に多くの課題が予想される。
当初、政府は市中心部のレドゥト地区にあるベレン国際水上ターミナルの使用を検討していたが、環境リスクを理由に210億レの浚渫工事が1月に中断。計画を断念し、代わりにオウテイロ港の改修工事に約1億8千万レを投じ、710メートルの新たな埠頭を建設中だ。埠頭完成は10月14日と予定されており、COP30の開催直前だ。
参加者の移動時間を30分以内に抑えるため、オウテイロ港とイコアラシ地区を結ぶ斜張橋の建設が急ピッチで進められ、9月完成が見込まれている。G1が8月初旬に現地を視察した際には、橋の中央構造部は完成していたが、接続道路は依然として工事中で、交通環境は整っていなかった。
クルーズ船を宿泊施設として利用するための運営モデルは既に国連との間で合意されており、宿泊提供は2段階で実施される。第1段階では、発展途上国および小島しょ開発途上国(SIDS)の98カ国の代表団が優先的に予約でき、1泊あたり約220米ドルで利用可能となる。第2段階ではその他の代表団やNGOの参加者が、最大600米ドルで予約できる見通し。
一方、環境への影響も懸念されている。パラー西部連邦大学漁業工学部のチアゴ・マリーニョ・ペレイラ氏は、停泊中の大型船舶はエネルギー供給や排水処理システムを稼働させ続ける必要があり、「1人当たりおよそ300キログラムの二酸化炭素を排出する」と分析。政府はCOP30の排出量をカーボンクレジット購入で相殺するとしている。
さらに、オウテイロ港周辺の河川交通にも影響が及ぶ可能性が指摘されている。この地域にはコチジュバ島やコンブ島があり、住民の通勤・通学に使われる渡し舟や、週末に運航される観光船が頻繁に行き交っている。この水域では既に複数の事故が報告されており、大型船の係留によってさらなるリスクが懸念されている。メイギンス氏は「小型船の交通量が多い区域にこのような大型船舶が2隻も係留されれば、衝突事故のリスクが高まる」と警鐘を鳴らした。