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ベネズエラで仮想通貨利用拡大=インフレと通貨暴落が背景に

2025年8月29日

万華鏡1
仮想資産に押され、存在感を失いつつあるベネズエラ通貨「ボリバル」(画像出典:photoAC)

 通貨暴落と高インフレを背景に、ベネズエラで仮想通貨の利用が急拡大している。米ブロックチェーン分析会社チェイナリシスによると、同国での仮想通貨使用率は23年7月から24年6月の1年間で110%増し、世界13位の普及国となった。商店や企業が給与支払いにまで仮想通貨を導入し、国民の間では金融危機の「避難通貨」として定着しつつあると28日付フィナンシャル・タイムズなど(1)(2)(3)が報じた。

 ブロックチェーン技術は、通貨ボリバルの価値下落や政府によるドル取引の規制に対する現実的な対応策として、国民から一定の支持を受けている。とりわけ、米ドルと連動するステーブルコイン「テザー(USDT)」の使用が顕著で、独立系の小規模店舗から全国チェーンまで、バイナンスやAirTmなどのデジタルウォレットを通じた支払いが広がり、従業員への給与支払いに仮想通貨を活用する例もある。

 首都カラカスの店舗で会計業務を担当するガブリエル・サンタナ氏は「大量のボリバルが入るとバイナンスでUSDTを購入する。多少の損失はあっても、インフレ率を考えれば長期的には得だ」と話す。

 経済学者のアーロン・オルモス氏は、インフレや低賃金、外貨不足、銀行口座開設の難しさなどの問題から、ベネズエラ国民が必要に迫られて仮想通貨を利用し始めたと指摘。調査機関ベネズエラ金融観測所(OVF)によると、24年10月に政府が為替介入を停止して以降、ボリバルは25年6月までに70%以上下落し、インフレ率は5月時点で229%に達した。

 こうした中で、銀行を介さない送金手段としての仮想通貨の価値が高まり、金融インフラへの信頼が揺らぐ中、代替経済の基盤としての役割を果たしている。国内の主要大学では仮想通貨関連の講座も開設されるなど、社会的関心の高まりも伺える。

 一方、マドゥロ政権はボリバルを支えるべく、ドルの非公式為替レート(闇レート)を掲載するウェブサイトの運営者らを逮捕するなど、取り締まりを強化している。中銀は昨年10月以降、インフレ統計の公表を停止し、独立系経済学者が拘束される事例も発生。OVFも25年5月以降、自主的な経済指標の発表を控えており、その背景には政府による圧力があるとみられている。

 政府自らも仮想通貨に取り組んできた。18年には世界初の国家発行の仮想通貨「ペトロ」を導入し、最低賃金の50%を同通貨に連動させる方針を示したが、普及には至らず、24年には事実上廃止された。23年には仮想通貨の主要規制機関が閉鎖され、その幹部は石油関連の仮想通貨取引に絡む横領疑惑で批判を受けた。

 こうした中、反政府勢力も仮想通貨に活路を見出している。野党マリア・コリナ・マチャド氏は、国家の財政安定化に向けて「ビットコインによる国家準備金」創設を提案。通貨価値の急落によって崩壊した国家財政の立て直しを図る試みとして注目されている。

 他方、米トランプ政権は先月、石油大手シェブロンに対し、制裁下にあるベネズエラの原油生産と輸出の再開を許可。これによりベネズエラ政府には一定のドル資金が流入すると見られるが、16〜19年のハイパーインフレ期に仮想通貨へ逃避した経験を持つ国民の多くは、依然として警戒感を崩していない。

 仮想通貨教育の専門家アニーバル・ガリード氏は「歪んだ経済下では、資本よりも常識のほうが価値を持つ」と指摘し、混乱する経済状況の中で冷静かつ現実的な判断が求められると強調した。


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