来年W杯で「TV3・0」導入=双方向型サービスでテレビ革命

テレビ視聴中に気になった商品を、リモコンでその場で購入――そんな体験が可能となる地上波デジタル放送の新方式「TV3・0」について、ブラジル政府は26年サッカーW杯直前に導入すると発表した。音と映像の品質向上に加え、インターネットとの連携により、視聴者に新しい参加型体験を提供。導入は大都市を皮切りに、15年をかけて全国に普及していく予定だと28日付ヴァロール紙など(1)(2)が報じた。
「TV3・0」は07年に導入されたデジタル放送の進化版であり、音声・映像品質の向上に加え、インターネットとの統合により、視聴者に相互作用型の体験を提供する。新基準としてATSC3・0技術を採用する予定で、これにより視聴中のコンテンツと連動したサービスや、パーソナライズされた広告配信が可能となり、視聴者は番組内で紹介された商品をその場で購入するなど、従来のテレビの枠を超えた体験を享受できる。
政府は、この新技術を通じて放送業界に新たなビジネスチャンスを生み出すことを目指している。視聴者一人一人にターゲットを絞った広告配信が可能となるため、広告主にとっても大きなメリットがある。放送局は新しいコンテンツ制作に対する投資を促進され、視聴者のニーズに合わせた番組制作が進むことが見込まれる。技術革新に伴い、視聴者参加型の番組や双方向のサービスが増加し、視聴者との距離が縮まることが期待される。
この新技術の導入には約90億〜110億レアル(約2430億円〜2970億円)のインフラ整備投資が必要であり、放送局やテレビ製造業者は新技術への対応に向けた準備が急務となっている。
政府は、26年6月のサッカーW杯開幕に向けて、大都市を中心に技術を導入し、その後15年かけて全国に普及を進める方針を示した。視聴者は、既存のデジタルテレビを引き続き使用しつつ、変換器を追加することでTV3・0に対応させることができる。
新技術導入には放送業界全体の協力が欠かせない。ブラジル放送協会(ABERT)のフラヴィオ・ララ・レゼンデ会長は、TV3・0への移行には放送局設備に対する資金的支援が必要だと強調しており、社会経済開発銀行(BNDES)との協議が進められている。放送局が新技術に適応するための融資確保が、今後の重要課題となる。
現在、高所得層を中心に、ネットフリックスやアマゾン・プライム・ビデオなどのOTT(インターネット経由のメディアサービス)に対する需要が急速に高まっており、従来のテレビ放送に対する関心が低下している。特に、インターネット接続が可能なスマートテレビではOTTを直接利用するのが主流となり、テレビ放送を視聴するためにアンテナやケーブル接続が必要ないため、従来の放送に依存しなくなっている。そのため、TV3・0にはその関心を取り戻し、テレビの優先的なコンテンツ提供手段としての地位を再確立することが期待されている。
政府は、TV3・0導入によって放送業界の革新が加速する上、広告主やコンテンツ制作者にとっては新たな収益源が開かれる可能性があり、業界全体にプラスの影響を与えると見込んでいる。
テレビ製造業者は新しい受信機の開発に取り組んでおり、特に「MIMO(Multiple Input, Multiple Output:複数の送信アンテナと受信アンテナを使用して、同時に複数のデータを送受信する技術)」を搭載した新型テレビが求められる。これにより無線通信に対応した高性能受信が可能となり、視聴体験がさらに進化する。
外国製のテレビ製造業者も新技術への対応を進めており、中国のハイセンス社などは早ければ来年にもTV3・0対応製品を市場に投入する予定だ。国際的な関心が集まることで、技術革新の波が国内だけでなく、世界中に広がることが期待されている。
今後、ブラジルはTV3・0の全国的普及に向けて試験運用を重ね、技術的課題への対応を進めていく方針だ。視聴者への啓蒙活動やインフラ整備が重要な課題となる。