英エコノミストがブラジル称賛=米国に示す民主主義の模範

世界で最も影響力のある雑誌の一つ、英「コノミスト」誌の今週号の表紙をボルソナロ前大統領が飾った。同誌はボルソナロ氏を「熱帯のトランプ」と称し、同氏を巡る裁判を「民主主義の教訓」と評したと28日ヴァロール紙など(1)(2)が報じた。
28日発行のエコノミスト誌は、ブラジル最高裁(STF)で行われるクーデター疑惑裁判に焦点を当て、「ブラジルは、米国に成熟した民主主義の教訓を提供している」と論じた。21年の米国議会襲撃事件を「奇妙で野蛮なクーデター未遂」と評し、23年にブラジルで発生した三権中枢施設襲撃事件と対比し、両国の政治状況を比較した。
表紙には、ブラジル国旗を顔にペイントし、米国議会襲撃事件で象徴となったバイソンの角付き帽子を被ったボルソナロ氏の写真を掲載。米議会襲撃事件で「バッファロー男」として知られたジェイク・アンジェリ(本名ジェイコブ・チャンズリー)氏を想起させる演出だ。

同氏は、トランプ支持者として21年1月に議会に乱入し、上院議長席に座るなど象徴的な行動をとった人物。後に司法取引により懲役41カ月の判決を受けて独房で服役したのち、25年1月にはトランプ氏による恩赦により釈放された。恩赦直後、「赦免されたぜ、ベイビー。今から武器を買いに行く」とSNSに投稿し、極右勢力の再結集と政治的暴力の再燃への懸念が広がった。
記事では「両国は役割を入れ替えているように見える」と述べ、「米国は腐敗、保護主義、権威主義の傾向が強まっている。トランプ氏は今週、連邦準備制度に介入し、民主党支配の都市を脅迫したが、ブラジルは「トランプ政権が罰しても、ボルソナロ氏を訴追して民主主義の保護と強化を固く決意している」と模範を示していると指摘。
ボルソナロ氏は来週9月2日には、同氏を含む8人が被告のクーデター疑惑「核心1」の裁判が開始される予定だ。
エコノミスト誌は「証拠はブラジルの過去の混乱を思い起こさせる」と評し、「四つ星将軍が選挙結果を覆そうと陰謀し、暗殺者が真の勝者を殺害しようとした。調査によれば、クーデターは意図の不足ではなく無能さによって失敗した」と解説。「ボルソナロ氏とその同盟者らは、有罪判決を受けるだろう」との見方を示し、事件の深刻性と司法判断の行方に注目している。
同誌は、軍事独裁の記憶がまだ鮮明であること、連邦憲法の強さがブラジルの民主主義の抵抗力を支えていると論じる。「加えて、大多数の国民がボルソナロ氏の行動を明確に理解し、多くは彼が権力維持のためにクーデターを試みたと信じている」と述べている。
STFの役割については「連邦憲法の守護者」として膨大な規則や権利、義務を監督し、一部では裁判官自らがオンライン上の脅迫に関する調査を開始し、被害者であり告発者であり裁判官を兼ねる複雑な立場にあると説明。「選挙で選ばれていない裁判官が大きな権力を持つことは、政治の腐敗とクーデター防止の両面に影響を及ぼす可能性があることは広く認識されており、裁判官本人も制度見直しの必要性を認識している」と論じた。
STFの権限はブラジルが抱える憲法上の複雑な課題の一端にすぎないと指摘し、慢性的な財政緩みや制御不能な税制優遇措置、支出の自動増加といった問題も挙げ、「これらの制度の一部は1988年憲法に権威主義者の台頭を防止するために導入されたが、議会が連邦予算の管理権を掌握し、独自の事業を資金面で支えている結果、投資が阻害され経済成長が鈍化している」と結論づけた。
一方、トランプ米大統領はSTFがボルソナロ氏に対して「魔女狩り」を行っていると非難し、ブラジル製品に対し50%の追加関税措置を発動。アレッシャンドレ・デ・モラエスSTF判事にはマグニツキー法に基づく制裁として、米国ビザを取り消す措置を講じるなどブラジルには外交上の障害となっている。
だが同誌は「トランプ氏の介入は自らの足を撃つことになる可能性が高い」と分析。「ブラジル輸出のうち、米国向けはわずか13%にとどまり、その大部分は他市場に転用可能な一次産品(コモディティ)で占められている。米国はすでに多くの免除措置を適用済みだ。トランプ氏の攻撃は、ルーラ氏の支持率を押し上げ、26年10月の次期選挙までに生じうる経済悪化を正当化する口実を与える結果となっているにすぎない」と指摘。最後に「ブラジルはポピュリズムという熱病から回復を目指す国家にとっての試金石である」と総括した。