国境の田舎町が国際物流拠点に=双洋回廊の中核橋梁、完成間近

わずか1万5千人の住民が暮らすブラジルの小さな町が、アジア国際物流の要所へと変貌しつつある。南米大陸を横断し、大西洋と太平洋を結ぶ双洋回廊(rota bioceânica)の一部を構成する全長約1・3キロの橋梁建設が、同プロジェクト内で最大の投資額となる1億100万米ドルを受け、急ピッチで進む。橋はブラジルのマット・グロッソ・ド・スル州ポルト・ムルチーニョ市とパラグアイのカルメロ・ペラルタ市を結び、回廊全体の機能を支える中核構造物としてアジア市場への玄関口となる新たな輸出動線を形成する。16日付CNNブラジルなど(1)(2)が報じた。
マット・グロッソ・ド・スル州パンタナールの湿地帯で建設が進む、双洋回廊プロジェクト最大規模のこの橋は、現在75%の進捗を見せており、完成は26年の予定。両国間を結ぶ3番目の橋となるこの構造物は、長さ1294メートル、幅21メートルの斜張橋で、高さ125メートルの塔によって支えられる。アクセス路と併せて整備され、地域の物流と人の往来を大幅に促進する見込みだ。
資金はイタイプ・ビナシオナルが提供し、両国政府および地域の関係者が連携して進めている。これにより、ブラジルとパラグアイ間の商業的結びつきが強化され、太平洋側の港へとつながる新たな輸出経路が確立されることになる。現在、ブラジルの輸出品の多くは大西洋沿岸の港を経由しているが、双洋回廊の完成により、アジア市場へのアクセスが飛躍的に向上し、物流コスト削減が期待されている。
双洋回廊は、ブラジルからパラグアイ、アルゼンチン、チリを経て太平洋岸の港に至る一連の道路網で構成されている。近年の南米における最も野心的な統合プロジェクトの一つで、地理的に隔絶されてきた地域を戦略的な物流拠点へと転換することを目指す。これで南米の貿易地図は大きく書き換えられる見通しだ。
一方で、橋梁の建設と並行して必要となる約13キロメートルのアクセス道路工事も進行中で、総額4億2500万レアル(約8千万米ドル)の予算が割り当てられている。この区間は湿地帯のため、工事が難航しており、道路と橋梁の完成を同時期に実現することがプロジェクト成功の鍵だ。
ポルト・ムルチーニョ市は、この橋梁建設を契機に都市計画の見直しを進めている。将来的な人口増加や輸送需要の増大に対応するため、交通インフラの整備やサービス業の拡充を図り、地域経済の活性化を目指している。現在の人口は約1万5千人だが、将来的には約3倍の増加が見込まれているという。
同市の市長は、双洋回廊の戦略的重要性を強調し、中国をはじめとする外国投資家の関心が高まっていることを明らかにした。市役所では、地図や開発計画を中国語でまとめた資料を作成し、投資誘致に力を入れている。さらに、既存の民間港湾施設も貨物取り扱いの拡大に向けて準備を進めている。
今後は道路網の近代化、税関機能の強化、都市インフラ整備などが進められ、物流増加に対応できる体制づくりが急務となっている。この取り組みは、地域の社会経済発展の起爆剤としても期待されている。
双洋回廊の未完成区間として残されていたこの橋梁が完成すれば、ブラジルから太平洋へ至る陸路の要所となり、南米の貿易構造に大きな変化をもたらす。1日あたり約250台のトラックがこの国境ルートを通る見込みで、ブラジル中西部の生産地域とアジア市場を結ぶ物流が大幅に効率化される見通しだ。