寄稿=弓場勇の故郷の町でバレエ公演=ユバ農場90周年の節目の年に=小原あや
2025年9月27、28日に兵庫県西宮市フレンテホールで行われた、NPO法人ダンスアーカイヴ構想および西宮市フレンテホール主催のダンス公演「緑のテーブル2017 アンソロジー」(演出・振付:岡登志子)において、ブラジルの弓場(ユバ)農場のユバ・バレエ団を代表して出演してきました。公演後は、弓場農場がこれまでにお世話になった方々や親戚や友人を訪ね、先日無事に日本から帰国しました。
今回の企画では、2日間のダンス公演のほか、公演会場で1カ月にわたり、「緑のテーブル2017」作品解説、ブラジル移民とユババレエ団、戦中の慰問舞踊公演などの展示も行われており、ユバの主な歴史内容の写真と、名塩市にユバ農場の子どもや大人たちの俳句が書かれた素晴らしい展示もありました。俳句は、公演の出演者たちが丁寧に自ら書き込んだものでした。
弓場農場の創立者・弓場勇の出身地、西宮市の北東部にある名塩は紙漉きの里として有名です。名塩の和紙は兵庫県西宮市名塩で作られる、雁皮に地元の泥土を混ぜて漉くという独特な製法が特徴の和紙です。江戸時代には「名塩千軒」と呼ばれるほど繁栄し、藩札や襖紙として重宝されました。
名塩では、西宮市議会議員の八木米太郎さんが弓場家のお墓参りや、地元の小学校の弓場才三郎の頌徳碑を案内してくださったり、西ノ宮市長、神戸の移住センターにも挨拶に訪れました。
ユバ農場は今年、創立90周年を迎えました。
その節目の年に、農場と深い縁のある西宮でこのようなダンス公演が実現したことは、ユバ農場にとって大変意義深く、心からの喜びでした。
現在、私はブラジル北東部・セアラ州カリリ地方のクラト市に在住していますが、生まれ故郷であるユバ農場の文化活動に関わり続けています。
今回の訪日にあたり、農場での日常の生活の様子や、ブラジル人でも触れる機会の少ない北東部カリリ地方の伝統文化を日本の皆様に紹介したいと思い、「ユバ農場(やま)とカリリの伝統文化」をテーマとしたワークショップを提案し、名塩・芦屋・東京で開催することができました。
国や人種が異なっても、人間の生活にとって大切な根底の要素には共通するものがあること、そして祈りや芸術は時と国境を越えて人々をつなぐ力を持っていることを、多くの方々と分かち合えたことを大変光栄に思いました。

