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《記者コラム》デルタンは一体、誰を味方につけたいのか?

2023年6月2日

デルタン氏(Lula Marques/Agencia Brasil)
デルタン氏(Lula Marques/Agencia Brasil)

 「デルタン氏は一体、誰を味方につけたいのか?」
 2週間前に下議を罷免された元ラヴァ・ジャット作戦(LJ)主任でパラナ州連邦検察官だったデルタン・ダラグノル氏の言動に強い疑問を感じる。
 彼が自分の罷免を「陰謀」と感じることは自由だが、その主張根拠には説得力がない。彼は罷免された理由を「最高裁のジウマール・メンデス判事のせい」「(選挙高裁の審理で報告官だった)ベネジト・ゴンサウヴェス判事が最高裁判事の座を欲しがり、ルーラ大統領にアピールすべく自分を罷免した」と主張している。
 だが、メンデス判事は罷免審理にノータッチ。ゴンサウヴェス判事は現在69歳で40代での指名が一般的な最高裁判事就任を狙っているとは考えにくい。この程度の主張は一般人にすら簡単に論破されてしまうことだ。
 さらに、5月30日放送のクウツウラ局の番組「ロダ・ヴィーヴァ」に出演したデルタン氏の言動は、輪をかけて奇異なものだった。「自分の罷免はルーラ大統領の陰謀だ」くらいなら予想の範囲内だが、デルタン氏は激しい剣幕で、罷免問題からも大きく逸脱した主張を行った。
 「1月8日の三権中枢施設襲撃事件の抗議者は逮捕するべきではなかった」「アンデルソン・トレス前法相には逮捕される理由がない」「ダニエル・シルヴェイラ元下議の罷免は最高裁でなく下院で決めるべきだった」
 民主国家ゆえ、個人の意見は自由だ。だが、1月のダッタフォーリャの世論調査で93%もの人が「罰するべき」と答えた三権中枢襲撃事件関与者を「逮捕するべきではない」とは、あまりにも感覚がかけ離れすぎている。
 トレス氏は三権襲撃事件発生時、あえて対策を講じなかった容疑で逮捕命令が出された。その後、自宅からルーラ氏の大統領選当選無効法案の原案が見つかり、クーデター関与も疑われ、弁護が極めて難しい立場にある。
 シルヴェイラ氏は「最高裁判事全員更迭発言」で非難を浴びたが、これは氷山の一角に過ぎず、それ以前から政界の問題児として知られている。自宅軟禁中の素行も悪名高かった。そんな彼の処遇を「議会で決める」というのは、政界の忖度を期待しているように捉えられかねない。
 デルタン氏は「女は男に従うべきだ。それは聖書にも書かれている」とも番組中に言い切っている。
 こうした言動の背景には、保守派からの強い支持を取り付けたいという意向があるのだろう。ただ、ここまで振り切った意見は保守派の中でも決して多いとは思えない。
 むしろ「LJはこんな考えの人が仕切っていたのか」と、LJへの不信感を抱いて久しい国民からの反感を、いたずらに集めるだけの結果になっているような気がするのだが。(陽)


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