《記者コラム》ハダジが経済界のゲームメーカーに

ルーラ政権が発足してから早いもので8カ月が経過した。その現政権の中で最も評価されている閣僚の一人がフェルナンド・ハダジ財相なのは間違いない。
そのことはすでに世論調査の数字でも現れている。クエスト社が7月に行った調査では、財界におけるハダジ氏の評価は65%まで上昇。さらに、下院議員に尋ねた閣僚の評価についてのアンケートでもハダジ氏は最多となる52%の「良い」を獲得。同じく経済スタッフのシモーネ・テベテ計画相も3位に入っており、経済スタッフへの信頼度の高さが伺える。
これは当初の予想からしたら大逆転の事態だ。なぜなら、この同じクエスト社の調査で、就任当時のハダジ氏の財界からの支持率はわずか10%に過ぎなかったのだ。
通常、財相は財界人が務めるところだ。ハダジ氏は教育相やサンパウロ市市長として知られ、財界との馴染みのない同氏の財相就任には「一体どういうことだ?」と財界から強い反発を招いた。中には短期のうちでの経済崩壊を予想する声まであった。
だが就任8カ月の間、経済崩壊が起こるどころか、GDP成長、利下げ、ドル安で、投資信託の世界的権威3社のうち2社から格付け上昇評価を得た。
また、ハダジ氏が掲げる財政均衡法案(アルカボウソ)が連邦議会で承認されたことにより、これまで同氏に吹いていた強烈な逆風が、一気に追い風に変わった。
何がこれほどまでの変化を可能にしたのか。コラム子はこれをハダジ氏の交渉上手なところに見ている。
これまでのイメージとして財相は財界出身者であり、政治的な交渉は連邦政府の抱える交渉担当者が行うイメージが強かった。
そこをハダジ氏は人任せにすることなく自分から率先して連邦議会に乗り込み、自分の意見を議会側と徹底して戦わせ、そこから導き出されたものを法案に反映させている。「三権の調和こそ、国の経済成長には最も不可欠」がハダジ氏の口癖となっているが、この精神が徹底されているのだ。
また、当初は「経済に対しての考え方が違う」とハダジ氏を警戒していたテベテ企画相も「こんなに一緒に働きやすい人だとは思わなかった」という通り、内部スタッフとのチームワークの良好さも注目されるところだ。
こうしたハダジ氏に対し、ネット上では、サッカー用語である「クラッキ・ド・ジョーゴ(今日の試合のヒーロー)」との褒め言葉で盛り上げる姿もしばし見受けられる。現在のルーラ政権ではまさにハダジ氏がゲームメーカーでかつゲームチェンジャーになっているような気がする。(陽)