《記者コラム》識字教育、コロナ禍前に回復=人間開発指数は低下も

教育省が28日、小学2年生の読み書き能力は新型コロナのパンデミック前の水準に戻り、同省が定めた目標をクリアしたと発表した(28日付G1サイトなど(1)(2)参照)。
カミーロ・サンタナ教育相によると、23年は小学2年生の56%が国立教育研究院(Inep)の定めた識字教育目標に達したという。19年の目標達成率は55%だったが、コロナ禍で遠隔授業が増え、細やかな指導が困難だった21年の達成率は36%まで低下していた。
読み書き能力は論理的な思考の基礎でもあり、年齢相応の読み書き能力を有する子供の増加は、その他の教科の成績の伸びも期待させる。
政党の枠を超え、知事や市長達が対話を通じて教育効果を高めるための全国レベルの政策には全連邦自治体と99・8%の地方自治体が参加している。知事時代の教育効果を買われて教育相に抜擢されたサンタナ氏にとっては、自州で行ってきた教育政策が正しかったことを確信させる機会となったことだろう。
これからは、コロナ禍のために年齢相応の読み書き能力が身につかないまま上の学年に進んだ子供達のフォローも大きな課題となるはずだが、高校中退を防ぐための政策も含めた改善努力が実を結ぶことを待ちたい。
28日付G1サイトなど(3)(4)によると、この日は国連開発計画(UNDP)が平均寿命や就学年数、所得を基に算出した、国や自治体の現状を示す人間開発指数(HDI)も更新された。22年のブラジルは193カ国中89位だった。同時に、12~21年の連邦自治体別評価リストも報じられた。UNDPによると、コロナ禍のインパクトは世界的に大きかったが、中でもラ米諸国は大きかったという。
ブラジルもインパクトが大きかった国の一つだ。そのことは、21年の指数0・766が、15年の水準の0・765まで後退したことからも窺われる。連邦自治体別に見ると、19年は全ての連邦自治体が12年を上回ったのに、21年は全ての連邦自治体が19年を下回り、コロナ禍の影響が明白だった。低下が特に目立つのはロライマの6・7%減やアマパーの6・6%減だが、リオやマット・グロッソ、連邦直轄区も5%台の低下を見せた。

UNDP開発コーディネーターのベチナ・バルボーザ氏によると、コロナ禍による反動で、長寿に関するHDIと所得のHDIでは10年間、教育のHDIでは2年間の改善分が失われたという。
28日には、「女性と子供の健康指標における格差」調査の結果、リオ州では20/21年の妊産婦死亡率が18/19年の2倍となったとも発表され、あの頃は妊産婦の死者が多かったことを思い出させた(28日付アジェンシア・ブラジル(5)参照)。
これらの調査結果を見ると、コロナ禍の爪痕は未だ多く残るが、少なくとも教育分野では失われた2年間が取り戻せたといえる。リオ・グランデ・ド・スル州の大水害やアマゾン地域での干ばつなどの影響もあり、長寿や所得のHDI改善分を取り戻すのには時間がかかりそうだが、種々の障害を乗り越え、前に進む姿を次の世代に伝えて欲しい。(み)