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《記者コラム》セレソンの拙攻癖がついた「あの試合」

2024年6月28日

24日のコスタリカ戦(Jessica Alchen USA Today SPorts)
24日のコスタリカ戦(Jessica Alchen USA Today SPorts)

 サッカーブラジル代表(セレソン)の様子がおかしい。これはドリヴァル・ジュニオル新監督後のチームに対して言っているのではない。それ以前から、正確には2022年サッカーW杯以来からのことを指している。
 具体的に何のことかというと、ある時期からのセレソンの試合で拙攻が目立っているのだ。その顕著な例となったのが24日に行われたコパ・アメリカでのコスタリカ戦。この試合でセレソンは74%もボールを支配し、相手にシュートを2本しか打たせず19本もシュートを放った。普通なら一方的なワンサイド・ゲームのはずなのだが、最終的なスコアは0対0の引き分け。積極的に動いて徒労に終わるような、見ていて虚しさの残る試合だった。
 この試合には伏線があった。セレソンはこの12日前のコパ・アメリカ直前の親善試合でアメリカ代表と対戦。この試合も1対1で引き分けているが、この時も25本のシュートを放ってたったの1点に終わっている。
 こういう試合は、「どうして、たかだか1点が入らないのだ」と見ていてイライラする。いっそのこと力負けでもした方が実力差がわかってまだスッキリする。「本来の力が何らかの理由で発揮できていない」という歯がゆさがあるゆえ、欲求不満が募るのだ。
 そして「この光景はどこかで見覚えがある」と思って記憶を辿ると、それは2022年のW杯だった。思い出すのはグループリーグでのカメルーン戦だ。あの試合、セレソンはすでに決勝トーナメント進出を決めていたこともあり、主力の体力温存のため、控え選手だけで臨んだ。この試合でセレソンは21本のシュートを打ちまくり、ボール専有率も65%に及んだ。だが、得点は入らず、試合終盤にカウンターを決められ、0対1で敗戦。これで勢いを落としてしまった。
 この試合の影響は準々決勝のクロアチア戦まで引きずった。クロアチア戦は、ボランチのフレッジが不要な前進守備をしてしまったことが結果的に土壇場での失点につながり、PK戦で敗北してしまったのだが、この試合も非常に拙攻の目立つ試合だった。この試合で放ったシュートは21本もあるが、得点はたったの1点。どこかでシュートが決められていれば、苦しまずに勝てた試合だった。
 セレソンが抱えている重苦しい雰囲気はこれ以降のものだ。セレソンは、得点がとれず、試合の均衡をなかなか破れない理由を自らの潜在能力のせいにされ、それぞれの所属チームや実績から考えれば高いはずの技能にも猜疑の眼が向けられている。これを打破しようとした結果、拙攻となり、重苦しい雰囲気がさらに増していくという悪循環に陥っている。ここを克服することが今後の鍵だろう。(陽)


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