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《記者コラム》ダテナがPSDBとサンパウロ市長選を救う?

2024年7月5日

ダテナ氏(Facebook)
ダテナ氏(Facebook)

 ここ最近のブラジルのニュースでもっとも驚いたことはと問われたら、コラム子は迷わず「ダテナの健闘」と答える。それくらい、先月末に発表されたクエスト社によるサンパウロ市長選の世論調査は衝撃的なものだった。

 ジョゼ・ルイス・ダテナ氏は確かにサンパウロ市ではかなりの有名人だ。それはむしろ今よりも10年以上前に感じていたことだ。コラム子が2010年に日本からサンパウロ市に越して来たばかりの頃、雑誌の表紙などでダテナ氏の顔はよく見ていた。テレビをつけたらレギュラー番組の司会もしているので「ああ、この人か」と、その「ダテナ」という覚えやすい名前と共にすぐに認識した。
 彼にはその頃から「茶の間のオピニオン・リーダー」的な庶民的な本音感覚があったし、2014年のサッカーW杯でブラジル代表(セレソン)が優勝できなかった時には、公約通り、上はスーツ、下はパンツ姿で生放送を務めるなどユーモア溢れる一面も見せた。日本で言うなら、かつての名ニュースキャスター、久米宏に比較的近いかもしれない。
 こうしたことは事前に承知していたつもりだったが、それでもキャンペーンの前に17%の支持を得るとは露にも思っていなかった。正直な話、彼を擁立した民主社会党(PSDB)に対して「血迷ったか」とさえ思っていたからだ。
 PSDBといえば、サンパウロ州においては知事を7期も務めるほど強い政治基盤があった。それが2021年に行った大統領候補内部選挙から党が完全に分裂し、離党者続出。かつての労働者党(PT)、民主運動(MDB)と並ぶ「国内3大政党」の一角だった同党の姿は今や見る影もなく、ついにはサンパウロ市議が一人もいない異常事態にさえ陥った。
 そんな中で、過去に選挙を4度も直前に断念し、「狼少年」のような印象さえ持たれていたダテナ氏の擁立だ。ヤケクソな選択だと思われても仕方はなかった。実際、ダテナ氏出馬に業を煮やして、党の古くからの重鎮たちが続々と離党していたのだから。
 これはダテナ氏の力なのか、なんだかんだでサンパウロ市内でPSDBが根強いからなのか、わからない。
 コラム子の見立てでは、ルーラ氏がホームレス労働者運動(MTST)のリーダー・ギリェルメ・ボウロス氏を推し、ボルソナロ前大統領が陸軍の元特別機動隊のリーダー・メロ・アラウージョ氏をリカルド・ヌーネス市長の副候補にするなど、極端に二極化する市長選の傾向に対し「おい、ちょっと待てよ」と言いたい層が少なくなかったことの表れなのではないかと思っている。
 タイミングの良い偶然だったのかもしれないが、ダテナ氏もPSDBも救われた調査結果だったように思う。(陽)


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