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外国人就労者に人気上昇中の町=「滋賀県湖南市へようこそ!」=(5)=地域振興に貢献するのが目標

2025年2月19日

 創業当初、スタッフの宿舎もない状況で、上森氏は自らハンドルを握り、スタッフの住居から派遣先企業まで送迎を行っていた。現在では、事務所隣にある元三菱重工の社員寮だったビルを買い取り、238室の自社社員寮を整備し送迎バスも用意されている。この寮には、中南米出身のスタッフが安心して暮らせるよう、保育所やブラジルのバールを再現したカフェテリア、さらに絵画教室、ロボット教室、日本語教室などが併設され、福利厚生の充実に注力している。
 上森氏の目標の一つは、「地域での生活、楽しみ、安らぎの場」を提供し、地元を活性化させることだ。中南米出身のスタッフから「日本は仕事だけで楽しみがない」という声を聞いてきたことから、2017年には「インフィニティクラブ」を設立。従業員同士の交流や、上森氏自身が「ありがとう」を直接伝える場となっている。このクラブでは年6回、日本文化を体験する観光やシュラスコ、文化交流イベントなどを実施している。

 また、滋賀県内で活動する国際交流グループ「カリーニョ」と連携し、ブラジルの著名ミュージシャンを招いた音楽イベントも主催してきたほか、2017年、2019年、2023年にはブラジルの国民的漫画家マウリシオ・デ・ソウザ氏を湖南市に迎えて交流イベントを行った。ソウザ氏はこれまで漫画を使用したオリジナルスタンプや、日本での学校生活やブラジルの日本人移民をテーマにした多言語の漫画を寄贈し、同市内の小学校で漫画の読み聞かせなども行った。

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 昨年11月、リオ・グランデ・ド・スル州のエドゥアルド・レイテ知事が初めて滋賀県を訪問した時には、2025年に友好姉妹提携45周年を迎える両地域の交流を深めるため、地域代表の一人として上森氏も歓待した。

在日日系人の希望となるロールモデルとして

リオ・ブランコ賞受賞時の上森秀夫氏
リオ・ブランコ賞受賞時の上森秀夫氏

 上森氏の多文化共生の推進や、ブラジルコミュニティの課題解決、学校運営やイベント企画などにおける長年の貢献が認められ、2022年1月には在名古屋ブラジル総領事館で「リオ・ブランコ国家勲章」が授与された。同年11月には、上森氏の尽力が評価され、地域社会とブラジルコミュニティをつなぐ関西初となる「FOCUS BRASIL JAPAN 2022」が湖南市内で開催された。
 中南米の日系人の子弟が両親の就労に伴い来日し、言語や文化の壁にぶつかり希望を失うケースがある中、上森氏の人生は、順風満帆とは言えない経験を経ながらも、日本で暮らす若い日系ブラジル人に希望を与えるロールモデルの一つである。上森氏は講演の依頼があれば積極的に応じ、若者たちに勇気と希望を届けている。
 湖南市内の一角には、上森氏がオープンした南米やブラジルの雰囲気と食事が楽しめる店「Bar & Pizzeria Capricciosa Konan」と「KANKUN RESTAURANT」が隣接している。

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 「フェイジョアーダをはじめとするブラジルの懐かしいメニューもあります。本当においしいですよ!」と上森氏は自信をのぞかせ、地域住民と南米出身者が文化を共有し、絆を深める場としても期待を寄せられている。(終、大浦智子記者)
【参考文献】毎日新聞2018年1月~3月『前を向く人/わたしの歩跡』(エリア編集委員・大澤重人著)


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