JICA協力隊員リレーエッセイ=ブラジル各地から日系社会を伝える=(40)=多くの子に陸上競技の魅力を=ミランドポリス文化体育協会=倉地陽南

“人”が大好きで、寛大な心と豊かな感性を持つ素敵な方々が沢山いるこの場所は、サンパウロ市から約600km、広大な土地に広がる牧場やさとうきび畑に囲まれた自然あふれるサンパウロ州北西部のミランドポリスという小さな町です。
私は2024年12月から、ここミランドポリスで陸上競技を教えています。私の配属先である日系団体のミランドポリス文化体育協会には陸上部をはじめ野球部やゲートボール部、婦人会や老人会があり、各活動に加えて、運動会や盆踊り、月に1回日本食イベントを開催するなど、日々協力しながら活発に活動し、町の中で日本文化継承の中心的役割を果たしています。
特に日本食イベントにおいては1週間前から仕込みが始まり、焼きそば、うどん、かりんとうや饅頭など、受け継がれてきた製法で文協の方々が全て一から作っています。簡単ではないこの仕事量をいつも楽しみながら、そして助け合いながらせっせと働いている姿がとても印象的で、どこか温かさや懐かしさを感じる古き良き日本の姿のようにも感じます。
次に、私が日々活動している陸上チームを紹介します。3歳の小さな子どもから、シニア層の大人の選手まで全て合わせると100名以上が所属するとても大きなチームです。毎日の練習は活気にあふれていて、代々続く歴史あるこのチームはまるで家族のようです。コーチや保護者など大人の方々は自分の子どものように子どもたちを可愛がり、時に叱り、良い記録が出たら皆で喜び、その人々の温かさと愛の深さを日々間近に感じることができます。

私はコーチの方々と協力し、陸上競技に楽しく触れながら総合的な体力を育成することが目的の小さな子どもたちの指導から、専門的に陸上競技に取り組む選手の指導まで幅広く行っています。
チームは、国内大会から国際大会まで年間で数多くの大会に積極的に参加しています。日本のように学校の部活動がないブラジルにおいて、子どもたちが競技に熱中し、真剣に向き合いながら切磋琢磨することができる環境があることは、心身の成長に大きな影響を与えています。
この陸上チームの大きな特徴の一つだと感じるのは、ミランドポリスの子どもたちは進学や就職に伴い町を出ることが多いですが、大人になっても陸上競技を続け、大会にも出場するといった長いスパンで陸上競技を楽しむ人が多いということです。
日本では部活動がある中学や高校、大学を終えると部活動の引退と共に競技からも引退という区切りをつける風潮が強いと感じるため、この点は日本とも異なる点だと感じます。
時々、私は陸上チームの子どもたちにこのような質問を投げかけます。「陸上競技、好き?」そうすると、きらきらした笑顔で「陸上競技はとても面白い!」、「走るのが好き!」、「走り幅跳びが好き!」など一生懸命伝えてくれます。
この陸上チームから私自身も沢山のパワーをもらい、活動の原動力となっています。これからも1人でも多くの子どもたちに陸上競技の魅力を感じてもらうために、そしてミランドポリスの陸上チームが更に勢いづくように私自身も活動に熱を注ぎたいと思います。