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年内にも日本向け牛肉輸出が解禁か=アジアでのブラジル台頭に米国警戒

2025年9月12日

万華鏡2
ブラジルにとって付加価値が高いとされる内臓肉は、有望なアジア向け輸出品目として注目されている(画像出典:photoAC)

 ブラジル肉輸出工業会(Abiec)のロベルト・ペローザ会長は、外交的機運追い風となり、日本が年内にもブラジル産牛肉の輸入を認可する可能性があると強調した。一方で、米国が最も警戒しているのは、ブラジルアジア市場台頭すること、特に内臓肉の輸出拡大だと指摘した。今年の牛肉輸出は、既に前年を上回る伸びを示しており、その中でもアジアが今後の成長の中核であることが改めて強調されたと9日付CNNブラジル(1)が報じた。

 人口増加と所得の向上に伴い、アジアはブラジルの牛肉産業にとって最優先の市場としての地位を確立している。特に内臓肉は、地域の文化的・宗教的な需要を背景に高い付加価値を有し、ブラジルの輸出業者が積極的に拡大を図る商品群だ。

 ペローザ氏は、「日本の焼肉店では、ブラジルで人気の高いピッカーニャ(イチボ)ではなく、牛タンのスライスがグルメ料理として認識されている。対して、ブラジル国内では牛タンの消費は限定的だ。このような消費傾向の違いが、ブラジルの牛肉産業の輸出戦略に影響を与えている」と述べた。日本市場では牛タンが10〜12ドル/キロで取引されるのに対し、ブラジルからの輸出価格は約2ドルにとどまる。同氏は、この価格差が内臓肉の付加価値向上の可能性を示すものだと指摘した。

 米国がブラジルのアジア市場進出を警戒する理由について、同氏は、「米国は生産規模に限界があり、ブラジルとは競争できない。オーストラリアも同様だ」と指摘。「アジアで市場を開拓すれば、後戻りはできない。世界中で必要とされるブラジルの高品質な牛肉だが、将来の消費拡大はアジアにある」と強調した。

 こうしたなか、日本との外交的な関係強化が輸出拡大の追い風となっている。特に今年3月、ルーラ大統領が6年ぶりとなる日本への国賓訪問を果たし、農畜産分野を含む多岐にわたる協力協定が締結されたことが大きな契機となった。その後、日本側の視察団がブラジルの食肉処理施設を訪問し、厳格な衛生基準を持つ日本の認証取得に向けた具体的な動きが進展している。

 一方、インドネシア市場でもブラジル産牛肉の輸出環境が拡大している。8日には同国政府が17の新規食肉処理場の輸出認可を発表し、輸出可能施設は計38に増加。さらに骨付き肉、内臓肉、加工製品の輸入も許可され、ブラジルの輸出ポートフォリオは多様化が進んでいる。25年におけるインドネシア向けの輸出実績は既に1万5400トン、売上高7160万ドルに達し、前年同期比で量・価値ともに約250%の大幅増加を記録している。

 25年1〜8月の期間、ブラジルの牛肉輸出総量は200万トンに達し、前年同期比20%の増加となった。輸出収益も107億ドルと33%増加し、中国が最大の輸出先として約100万トン、54億ドルの取引額を占め、アジアが牛肉輸出の主軸であることを改めて示した。今後、ペローザ氏らは中国訪問を予定しており、輸出拡大に向けた交渉を強化する見込みだ。

 24年12月にAbiecがまとめた輸出見通しによれば、25年の牛肉輸出は量で12%、収益で14%の成長を見込んでいた。だが、25年に入ってからは収益が16%増加するなど、予測を上回る好調な滑り出しとなっている。ペローザ氏は「米国の高関税措置の影響もあるが、輸出先の多様化が成長を支えている。国によって輸入量の増減はあるが、全体としてはバランスを保っている」と述べた。 


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