米特殊部隊がベネズエラ近海展開=ビンラディン殺害作戦で活躍
【既報関連】米陸軍の第160特殊作戦航空連隊、通称「ナイトストーカーズ(夜間奇襲部隊)」が、カリブ海のベネズエラ近海で展開している様子が確認された。同部隊は11年、国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者殺害作戦でも出動したとされ、その出現が中南米に新たな緊張をもたらしている。今回の動きは米国の軍事的圧力の一環とみられ、米国がベ国政権転覆を視野に入れた作戦を準備中との見方が強まっていると23日付G1など(1)(2)(3)が報じた。
米ワシントン・ポスト紙によると、10月初旬、カリブ海上空で米軍の攻撃ヘリが飛行する映像がSNS上で拡散された。確認された航空機はナイトストーカーズ所属の機体とみられ、ベネズエラの海岸から約150キロの海域を旋回していた。同紙は衛星画像を分析し、トリニダード・トバゴ北東沖に同部隊が作戦時に拠点とする船舶「MVオーシャン・トレーダー」とみられる艦影を確認したと報じた。トランプ政権の関係者も匿名を条件に、ヘリの存在を認めた上で、「訓練の一環」と説明している。
80年代に創設されたナイトストーカーズは、夜間や悪天候下での高難度作戦を専門とし、陸軍特殊部隊「デルタフォース」など、他の特殊部隊と連携して行動。部隊は重攻撃用のMH―60ブラックホークや軽装型のMH―6リトルバードなどのヘリコプターを保有し、偵察・情報収集用ドローン部隊も編成されている。
これまでは中東での対テロ作戦に主軸を置いてきたが、近年は南米方面への展開が増加しているとの指摘もある。ブラジル海軍の政治戦略研究センターの協力研究員で、政治学博士のマウリシオ・サントロ氏は、ナイトストーカーズのカリブ海展開を、「ベネズエラへの特殊部隊作戦の前段階として米国が位置づけている可能性がある」と分析した。
同氏は「トランプ政権は法的および政治的根拠を積み上げ、麻薬取締を名目にした軍事行動を世論に受け入れさせようとしている。これは、マドゥロ政権の正統性を損なう狙いも含まれている」と指摘した。
米国内報道では9月以降、ベネズエラに対する軍事行動が検討されているとされ、標的には麻薬カルテル関連施設が含まれる見通しだ。カリブ海沿岸で展開中の艦隊や航空戦力は、少なくとも7隻の船舶を攻撃、32人の死者を出しており、米国側は「すべて麻薬およびテロ組織に関与していた」と主張。ベネズエラ政府はこれを「侵略行為」と非難し、米国が政権転覆を狙っていると警戒を強めている。
ワシントン・ポスト紙22日付で、トランプ大統領は先週、CIAに対し、「ベネズエラ政府に対して攻撃的措置を取るよう」指示する機密文書に署名したという。同文書は、マドゥロ政権打倒を明示的に命じるものではないが、結果的にそれを導く可能性のある行動を許可する内容であるとされる。関係筋は「大統領はベネズエラ政府への〝攻撃的行動〟を求めた」と証言しており、米国が秘密作戦を通じて政権転覆を視野に入れているとの見方が広がっている。
米政府はさらにベネズエラ内部への「限定的地上攻撃」も検討しているという。15日、トランプ氏自身が「麻薬密輸を地上で阻止する」と述べており、作戦対象には密輸組織の拠点や密航用滑走路などが含まれる可能性がある。初期段階ではマドゥロ政権の直接的な排除を意図していないとしつつも、軍事的・心理的圧力を通じて体制の不安定化を狙う構図を指摘している。
23日、ベネズエラ沖での作戦に続き、太平洋上でも米軍の攻撃が確認された。ピート・ヘグセス米国防長官は米軍が太平洋の公海上で麻薬密輸船とみられる船舶を攻撃し、3人を殺害したと発表。前週にも太平洋上で同様の攻撃が行われており、カリブ海を含めた一連の作戦での死者数は少なくとも37人に上る。米軍は「麻薬テロ組織に対する継続的な作戦であり、今後も日々実施する」と表明。
一方、中南米諸国では批判が広がっている。コロンビアのペトロ大統領は、トランプ氏がコロンビアを「麻薬国家」と呼び、経済支援の停止や関税強化を示唆したことに反発。ベネズエラと同様、「地域の不安定化を狙う政治的挑発だ」と非難している。
専門家は、これら一連の軍事行動は麻薬取締を名目としているが、実際には南米諸国への影響力強化を目的としているとの見方を強めている。









