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神秘的な自然美誇る深淵池=南米最大級の洞窟群の聖域

2025年9月16日

万華鏡2
アレシャンドレ・ロボ氏が撮影した「ポソ・ダ・カミーザ」(Foto: instagram @natureza_subterranea)

 底知れぬ深さを持ち、最深部に辿り着いた人はいない――中部ゴイアス州の奥地に、青く澄んだ神秘的な水を湛える深淵池がある。「ポソ・ダ・カミーザ(Poço da Camisa、シャツの深淵池の意)」は、その自然美と謎めいた成り立ちにより、近年、専門家と観光客の双方から注目を集めていると14日付G1など(1)(2)(3)が報じた。

 この深淵池は、同州北西部ジヴィノーポリス・デ・ゴイアス市の自然保護区、テラ・ロンカ州立公園内に位置し、周囲は広大な石灰岩地帯で構成され、南米最大級とされる鍾乳洞群を擁する地域の一角にある。ポソ・ダ・カミーザもまた地下洞窟内に形成された水源であり、その特異なターコイズブルーの水色と、未確認の深さによって、長年にわたり学術的関心の的だ。

 これまでに複数の洞窟学者やスキューバダイバーが調査を試みてきたが、深淵池の底に到達した記録はない。地元に伝わる伝承に、かつて一人の旅人がこの地で忽然と姿を消し、木の枝にシャツだけが残されていたという逸話があり、これが〝シャツの深淵池〟という名称の由来の一説とされている。

 洞窟内部の様子を収めた1枚の写真が、24年に開催された国際写真フェスティバル「ブラジリア・フォト・ショー」において、オノラブルメンション(特別賞)を受賞した。撮影者は、地下自然環境を専門とする洞窟学者で写真家のアレシャンドレ・ロボ氏で、水面に反射する光と、静寂に包まれた岩壁の神秘的な色彩が高く評価された。

 ポソ・ダ・カミーザは私有地内に位置し、正規の旅行代理店を通じた訪問が義務だ。観光ツアーを手がけるアジェンシア・ペレグリーノ・アヴェントゥーラ社によれば、深淵池はジヴィノーポリス市中心部からおよそ14キロの地点に位置し、縁までは約1キロの徒歩移動を要する。訪問者には前日にロープ登下降に関する訓練が課される。

 現地では、ロープを使って45メートルほど懸垂下降して深淵池まで下り、水面で浮遊しながら周囲を観察・撮影する時間が設けられている。その後、再びロープで上昇して戻る。これまでの潜水調査では、50メートル以上の深度に達した事例があるが、底部は依然として確認されていない。

 こうした神秘性に加え、同深淵池が所在するテラ・ロンカ州立公園自体も、自然景観と地形的多様性においてブラジル有数の存在として知られている。面積は5万7千ヘクタール超で200を超える洞窟、200以上の滝、河川、ドリーネ(陥没地形)、固有の動植物が確認されている。

 同公園を流れるサンドミンゴス川は、古い地形に沿って緩やかに蛇行し、緑がかった水面と独特の曲線美を特徴とする。現地ではシュノーケルを用いた浮遊型の川下り体験も可能で、透明度の高い水中景観が人気を博している。

 国民的司会者のアナ・マリア・ブラガ氏も、同公園の景観をテレビ番組内で「まるで宝石のよう」「息をのむような美しい場所」と称賛し、国内外からの関心を高める一因となった。

 同地は宗教的な側面も併せ持つ。公園の一部には「聖域」とされる洞窟が存在し、北東部バイア州の「ボン・ジェズス・ダ・ラパ」への巡礼路の通過点として知られている。洞窟内には信仰者が残した像や供物が置かれ、滴り落ちる水を「癒しの水」として顔や手、傷口に触れる者も多い。毎年7月末には1万人規模の巡礼者がこの地を訪れ、洞窟周辺ではミサが行われる。
 同公園は89年に創設され、96年に保護区としての境界が正式に確定された。かつては農業、畜産、資源採取が地域経済の中心だったが、現在はブラジル有数のエコツーリズム拠点として発展しつつある。地元出身のガイド、ラミロ・イラリオ氏は「この場所には神に近づくような静けさがある」と語り、公園の精神的価値の深さを示唆した。

 いまや同地は専門家、冒険家、観光客のいずれにとっても、静寂に包まれた未踏の自然と対峙する場として、特別な地位を占めている。


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