高まる対米関係の緊張=ボルソナロ有罪とロ産燃料で

ブラジルに対する米国からの圧力が強まっている。ブラジル連邦最高裁(STF)によるジャイール・ボルソナロ前大統領の有罪判決を受け、米政府は司法判断に対する反発から、さらなる制裁措置を示唆している。一方、トランプ大統領はG7諸国に対し、対ロ制裁強化に向けた連携を呼びかけている。ロシア産石油・燃料を輸入する国に対しては、米国が二次関税を課す制裁措置の導入を検討しており、これにより、ロシア産ディーゼル油を大量に購入しているブラジルへの経済的打撃が懸念されている。
15日付BBC(1)によると、STFがボルソナロ氏に27年超の禁錮刑を言い渡したことを受け、マルコ・ルビオ米国務長官は同日、「法の支配が崩壊している」と批判。「司法弾圧」の一環として、ボルソナロ氏への刑事訴追を強く非難し、近くブラジルに対する追加制裁を発表する可能性を示唆した。
ルビオ氏は、ボルソナロ氏の有罪判決が、「米国企業や米国内で活動する個人にまで影響を及ぼす拡大した司法権の行使」と位置づけ、「これは政治的な迫害であり、米国はこれに対して適切に対応する」と述べた。同氏の発言は、トランプ政権下での厳しい対ブラジル政策の継続を示すもので、ブラジルの司法判断に対する強い不信感を表明。米国務省の西半球局も、司法の独立を損なう行為に関与した人物への責任追及を宣言している。
これに対し、ブラジル外務省は、ルビオ氏らの発言は「民主主義への脅威で受け入れられない。ブラジル司法の独立性は1988年憲法に基づくものである」と反発。司法判断は十分な弁護の権利を保障した上で下されたものであり、「民主的制度がクーデター未遂に対して断固たる対応を取った結果」と強調した。
一方、15日付ヴァロール紙(2)によると、トランプ大統領は対ロ制裁の強化に向け、G7諸国に連携を呼びかけている。特に、ロシア産石油・燃料を輸入し続ける国々に対しては、米国が独自に2次関税を課す制裁措置を導入する方針を示しており、同様の対応を各国にも求めている。
この方針は、ロシアの軍事行動に対する資金源を断つ狙いがあり、最大のエネルギー輸入国である中国やインドが主な標的とされているが、ロシアとの貿易関係を深めるブラジルも、その影響を免れない可能性がある。
実際、ブラジルは今年1〜8月にロシア産ディーゼル油に約38億ドルを支出し、同期間のロシアからの輸入全体の54・5%を占めている。ロシアからの燃料輸入は前年同期比で16・4%減少したものの、依然として大規模だ。
7月には、米国がインドのロシア産原油購入継続を問題視し、インド製品にさらに25%の間税を上乗せする措置を取っており、制裁対象の拡大が現実味を帯びている。今月実施されたG7財務相のオンライン会合でも、米国代表は「ロシア産燃料の輸入国に対し、今こそ厳しい措置を講じるべきだ」と主張し、同盟国に対し足並みを揃えるよう求めた。
ただし、欧州諸国は現在もロシア産天然ガスの輸入を継続しており、追加制裁への参加には慎重姿勢を崩していない。こうした中、米国が単独でブラジルやインドなどを標的とする強硬措置に踏み切る可能性も否定できないとの見方が出ている。
外交筋は、ボルソナロ氏の有罪判決を契機とした米国の政治的反発と、ロシアとの経済関係をめぐる圧力が重なり合うことで、ブラジルの対米関係における緊張がさらに高まっていると分析している。