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ぶらじる歌壇=48=小濃芳子撰

2026年1月23日

 サンパウロ 梅崎嘉明

今生の別れに一度逢いたきと思いいし君の訪ねくれたり

沢山の土産を持ちて訪ね来し友の芳子さん九三歳

九三歳はまだ若きなり私は百二歳「生きる屍」

久しぶりに逢いて語るは短歌こと家庭のことと話題はつきず

新聞の花壇を受け持つ君にして止めれはボケると君を励ます

今世の別れとなるやも二人して写真を撮とりて記念となせり

 サンパウロ 橋本孝子

クリチーバシティツールのバスの中聖都。とは違うと夫はしきりに

暑い外冷房効きしバスの中体調管理難しき旅

 サンパウロ 山岡秋雄

午年の初コーヒーを君と飲む十数年の友情の味

祖母ちゃんがゆっくり上る階段を孫らしき児が駈け上りゆく

日系は長寿者なるかわが友に卒寿者二人百寿者一人

太陽光ビタミンDを照射すと聞きて禿頭さらしつつゆく

歩道石の隙間に生えし雑草や育ち花咲き実をむすびたり

夏嵐に吹き落とされし鳥の巣に小鳥は見えず胸撫でおろしたり

認知症の兆しの見ゆるわが友のその妻優し貴方あなたと

急がねば急な階段ものとせず膝も痛まず上り切りたり

人生のなすべき事を遂げしごと高齢の人犬と散歩す

往年の車体と色のカブト虫今なお走る聖市の街路

 サンパウロ 寺田雪恵

台風がすべての小鳥さらいしか小鳥の飛ばぬ朝の青空

ひかえ目にサビア鳴けども静かなり応える声のなき青空よ

餌あさる鳩はびっこを引いている一羽と云うは淋しかりけり

あと1センチで穴に入らない玉つきの玉いぢわるそのもの

月下美人なぜ真夜中に開くのか蕾ばかりをたのしみており

 サンパウロ 比嘉茂子

久方の友よりデンワ老いたれど声さわやかに我を気ずかい

我ら皆なれない月日生きぬいて何を語ろう語ろうか愛を

半世紀余この地愛する我なるもふる里遠く妹は住むなり

紅型の衣まといて美童の舞い美しき梅の花もどき

 サンジョゼ・ドス・カンポス 藤島一雄

新しき年始まりぬ人類が非戦の世界の構築望む

一月と言えば初場所力士らは昇進賭けて土俵にあがる

安青錦十四場所で大関に史上ダントツ稀有な逸材

朝乃山悲願の幕内復帰せり更なる躍動フアンは期待す

時疾風いかつい力士のいる中でひときは目立つ美男の力士

人の世は敗者復活戦と聞くゼロより出直し良いではないか

本年はコッパドムンド伯国のカナリヤ軍団頂点目指せ

 サンパウロ 安中攻

新年も雨の被害を見聞きして自然と仲良く暮せたらと請う

カラオケで演歌を唄う我世代昭和平成遥かとなりし

新年の集いに友らと口づさむ過ぎし若き日胸に抱きしめ

子育てのあの頃の日々なつかしむ時折聴いた演歌偲びつ

おぞうにの味つけ母に習いしと話す妻いて和む食卓

 サンパウロ 木村衛

頂きし椰子樹を読みて先達のあの人この人歌人を思う

歌人の心の訴え身に沁みて我もと思えど思いに遠く

何もかも自分でしようとする我に娘は厳しく弱みをつく

山奥の陋屋に住み作物をそんな夢みる老いの妄想

めぐり来し卒寿も半ばの年令なれば此のひとときの生をいとしむ

 グワルーリョス 長井エミ子

巡り来るクリスマスツリーのまばたきはメルヘンさそう年重ねても

年の瀬や子は門口に小銭持てゴミ収集車の到来を待つ

盗んだネ菜園の菜を取りません年の夜に見た夢に驚く

持て余す一日もあれど一年は突風と化し咲きて花散る

おめでとうお節料理のなつかしく文したたむる日本の貴女に

餅の数子等に問いおる母の声埋め火なりし元旦の記憶

元旦や月下美人の一ツ閉づ子も古りたりて行く又一ツ


◆ 名歌から学ぶ短歌の真髄 ◆

 短歌史に残る有名歌人の歌から心髄を学ぶコーナーです。良い歌を沢山読み触れる事でよりよい作歌に繋がるはず。

白鳥の来しこと告げて書く手紙遠き一人に心開きて

道浦母都子

 夕暮れに吹き始める木枯らしは、間もなくやってくる冬の前触れだろうか。北國の湖には、遠くから白鳥がやって来ました。

 遠き土に住むあの人に手紙をかきましょう。あの人のことを思うと心わくわく暖かくなります。

 昔といっても間近な時代、IT文明の始まる前は手紙こそ心を開き、想いをつたえ、相手の気持ちを知る唯一の方法でした。

 しかし、現在はそのような長い時間はなく、スマホで何事もつたえられ、心は瞬時にわくわくまた悲しみにつつまれることがおおくなります。情報を早く掴んだ者が勝ちという社会の流れが定着し、これからも益々進むことでしょう。

 この歌は、優しく誰にでも分かりやすいものです。最後の結句がこの歌を引き締めております。

 人生は長くなったのでょうか。時間に追い回される分、いそがしくなったともおもわれるのですが。

 心を開く人は、やはり一人でしょう。大切な人は昔も今も変らないとおもいます。

《備考》道浦母都子(みちうら もとこ)

昭和22年 和歌山市生まれ

大阪府立北野高校時代、朝日歌壇に投稿、それがきっかけとなり、短歌を作り始める

早稲田大学在学中、歌詩、「未来」二入会

近藤芳美に師事

歌集 ゆうすげ、女うた男うた、水辺のうた、など。


宮中「歌会始の儀」=「ブラジルと日本で会つた子どもらの明るい未来幸せ願ふ」=佳子さま、当地への思い託す前の記事 宮中「歌会始の儀」=「ブラジルと日本で会つた子どもらの明るい未来幸せ願ふ」=佳子さま、当地への思い託す
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