《記者コラム》真綿で首を締める人間=異常気象に実感する諺

18日付弊紙1面に「アマゾン川支流が砂漠に」という記事(1)がある。アマゾン川の主要支流のソリモンエス川が干上がり、見渡す限りの砂州を歩いて渡る人の写真には、改めて「真綿で首を締める」という諺を思い出させられた。
真綿の繊維は細くて柔らかいが、切れにくい。この諺は、遠回しにじわじわと責めたり痛めつけたりすることを意味している。
北部4州を悩ます干ばつは、人間の活動で増幅された地球温暖化による異常気象の一つだ。水や食料、電気、燃料といった生活必需品が不足し、病気になっても病院に行く手段さえないという地域が出ていることを考えると、人間は自分達の手で自分達の首を締めていると思い知らされる。
環境問題を取り上げても読者はあまり喜ばないと言われて以来、記事にすることは控えていた。
しかし、温暖化やそれに伴う状況は悪化の一途にある。それを実感させる一例が、15日付フォーリャ紙サイトなど(2)(3)が報じている干上がったソリモンエス川であり、16日付アジェンシア・ブラジルなど(4)(5)が報じるように、観測開始以来の最低水位を記録し続けるネグロ川や、17日アジェンシア・ブラジル(6)が報じるように、新たな風水害で死者が増えたサンタカタリーナ州などの南部諸州の事例だ。
北部の干ばつはエルニーニョ現象と大西洋の海水温上昇が重なったことで深刻化した。8月3日付弊紙コラム(7)にもあるように、大西洋の海水温上昇は海水循環の崩壊を引き起こす可能性もある。
海水は人間の諸活動に伴う温室効果ガスやその他の影響の多くを吸収してくれている。しかし、そのせいで海水の酸性度や水温は上昇している。もし吸収能力の限界を超えてしまった場合は、大気温の上昇速度が増すだろう。
国連などが地球温暖化が予想以上に加速していると警鐘を鳴らし、万年雪や氷が溶けていると訴えているのは、既にその段階に入っている証拠かもしれない。
ソリモンエス川の砂漠化などは、真綿で締め付けられた首が痛みを覚え始めた証で、地域住民らの被害を訴える声は、その呻き声であるようにさえ思われる。
長く続けた生活習慣によって患った病は一朝一夕では治らない。地球温暖化も庶民の努力ではブレーキをかけるのは困難だ。しかし、何もせずにいれば事態は悪化するのみだ。
報道では、ネグロ川流域では先日、少し雨が降ったが、水位低下は継続しているという。サンパウロ州での水危機の際、少々の雨では地面を湿らすことしか出来ず、主要水系の水位低下を防ぐことは出来なかったことを思い出す。
長い間の活動による異常気象は簡単には解消できないが、森林伐採や森林火災を減らし、植林や温室効果ガス排出削減策によってブレーキをかけることはすぐにでも始められる。
万物の霊長と自らを誇ってきた人間も、動物や先住民族の知恵に学び、自然と共生することを真剣に考えるべき時が来ている。(み)
(1)https://www.brasilnippou.com/2023/231018-13rasil.html
(4)https://agenciabrasil.ebc.com.br/geral/noticia/2023-10/rio-negro-chega-ao-menor-nivel-da-historia 16日
(5)https://www.riomaframix.com.br/regiao/apesar-da-chuva-nivel-do-rio-negro-segue-baixando/