《記者コラム》戦争の中で生きる子供達=トラウマの影は遊びの中にも

イスラム過激派ハマスによるイスラエル攻撃とイスラエル軍による報復攻撃が起きて以来、ガザ地区で生まれ、生活する子供達の様子は一変した。
10月30日付G1サイト(1)によると、それまでは産院で生み、育てられていた子供達は、地下壕の中の新生児用の特別なスペースで扱われるようになり、夫を戦場に送り出した母親と共に不安や危険と隣り合わせの生活を送っている。
戦争や紛争という言葉さえ知らずにいたであろう子供達も、爆撃や家屋倒壊、近親者の死などの経験で生じたトラウマに苛まれ、遊び方や会話の内容まで変わってしまったことは10月21日付アジェンシア・ブラジル(2)も報じている。
10月20日付G1サイト(3)には、ガザ地区で働く国境なき医師団の精神科医が、シリアで見た、路上に落ちた銃弾などの絵ばかり描く子供達の姿から、戦争が子供達の遊び方まで変えてしまうと実感したことが書かれている。
こういった状況は、人質として同地区に連れていかれたイスラエル人や外国人の家庭の子供達にも共通するはずだ。
パレスチナ側の発表によると、ガザ地区での死者の40%かそれ以上は子供達だという。具体的な数字を拾うと、10月25日付G1サイト(BBCサイトからの転載)(4)は、同時点でのガザ地区の子供の死者は2360人、負傷者は5364人で、1日平均で400人の子供が死傷していると報じた。他方、10月29日付ブラジル・デ・ファト・サイト(5)には、ガザ地区の死者8千人中3500人が子供とある。
ルーラ大統領達は繰り返し、「子供達には罪はない」「罪もない子供達が命を落としている」と訴えているが、イスラエルが停戦に応じる気配は見えない。
ただ、危険な社会環境下で暮らす両親のもと、極度のストレスを受けながら生まれ、生活を送る子供達はガザ地区などの戦争の現場にだけいる訳ではない。
10月20、26日付アジェンシア・ブラジル(6)(7)では、リオ市のマレー複合スラムで展開中の犯罪組織掃討作戦「マレー作戦」の社会的インパクトについて言及している。麻薬密売者やミリシアと呼ばれる犯罪者の民兵組織が支配するファヴェーラ(スラム街)も、警官隊との抗争が頻発し、流れ弾による犠牲者が絶えない危険な場所の一つと言える。
家庭内暴力もまた然り。親や子供が怯えながらの生活は、子供達の将来に暗い影を落とす一因となり得る。
イスラエル側が停戦に応じる姿勢を見せないなら、子供達をトラウマから救う方法はガザ脱出のみかも知れないが、それが可能な家庭は限られているだろう。
爆撃だけでなく、恐怖体験やトラウマは子供達の肉体の健康まで蝕む可能性があり、その影響は長く続くであろうことを考えると、1日も早い停戦と平安な日々の到来を祈らずにはいられない。(み)