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《記者コラム》世界に誇るべき「ブラジルのアルバム」は?

2024年5月24日

「街角クラブ」のジャケット(Instagram)
「街角クラブ」のジャケット(Instagram)

 ストリーミング・サービス「アップル・ミュージック」が13日から22日にかけて、「オールタイム・ベストアルバム」という企画を行った。同企画では同社選考員が選んだ音楽アルバムの名盤を100位から1位のカウントダウン形式で、1日に10枚ずつSNSで発表。世界中の音楽ファンの間で話題になり、ブラジルや日本でもかなりの話題となった。
 100位の中にブラジル人アーティストのアルバムはなかった。というより、ランキングのほとんどをアメリカ、イギリスのアーティストの作品が占め、それ以外の国のアルバムが入ることはかなり稀だった。
 これについてネット上では「アップルのストリーミングは世界共通のサービスなのだから、もう少し国際的な配慮があっても良かったのではないか」との声が見られた。
 そこでコラム子もふと「ブラジルからランクインするとなったら何になるか」と考えた。今回のコラムでは世界に誇るべきブラジルの名盤を紹介したい。
 一つ目は「街角クラブ(クルーベ・ダ・エスキーナ)」。国際的人気歌手ミルトン・ナシメントがロー・ボルジェスとのコンビで1972年に発表したアルバムだ。農園にいる黒人と白人の少年のジャケット写真でおなじみだ。
 このアルバムを選んだ理由は、近年、諸外国のロックファン、とりわけシティ・ポップ趣味の人々がこのアルバムの魅力を再発見し、若い音楽マニアの間で知られる存在となっているからだ。ミルトンはビートルズを意識して楽曲を製作したのだが、ブラジル的解釈が混じりあった結果、少し洒落た仕上がりとなり、そこが受けているようだ。
 「ブラジルといえばボサノバ」という観点で言うならば、エリス・レジーナがボサノバの巨匠アントニオ・カルロス・ジョビンと組んで1974年に発表した「エリス&トム」も良いだろう。ボサノバのいわゆるヘタウマ・ヴォーカルとは一線を画す名歌手エリスのパワフルかつ絶妙にコントロールされたヴォーカルが聴きものだ。
 国際的知名度の高いカエターノ・ヴェローゾはどれを選ぶかで票割れしそうだが、やはり1972年の「トランサ」か。軍政時代の政治亡命時代の孤独を英語詞で歌った傑作だ。
 そのカエターノも絡んだ1960年代の文化運動トロピカリズモも国際評価が高い。その中心的バンドで、後にニルヴァーナのカート・コバーンやベックといった国際的ロックスターも絶賛したオス・ムタンテスの初期のアルバム群、そのバンドの歌姫で惜しくも昨年亡くなったヒタ・リーが1975年に発表したソロの最高傑作「フルット・プロイビット」も世界に聞いてほしい一作だ。
 「ブラジル版オールタイム・ベストアルバム」は考えるだけでもワクワクする。ブラジルのアップル・ミュージックにはぜひ独自のブラジル版ランキングを発表して欲しい所だ。(陽)


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