アチバイア福島県人会盆踊り=教会前広場に相馬盆唄響く=功労者・故乾敏雄さんを顕彰

アチバイア福島県人会(古沢七男代表)主催の第57回盆踊りが6月14日(土)、15日(日)の昼から晩までサンパウロ州アチバイア市マトリス教会前広場で開催され、数千人の市民が10度以下になるような真冬並みの寒気の中、日本の祭りを楽しんだ。マトリス教会とはその地域の中心的教会のこと。

14日午後6時からの開会式では、3月に亡くなった乾敏雄同会長に黙祷が捧げられた。今回の盆踊りは父の跡を継いで、娘のサチエさん(50歳、3世)が実行委員長となって準備を進めてきた。母・乾富江さん(78歳、2世)には当日、毎年盆踊りを実行して伝統行事にとして守ってきた敏雄さんの功績を顕彰する感謝状が贈られた。
生演奏と歌による相馬盆唄に始まり、炭坑節、河内おとこ節などが次々櫓から流れ、その周りにはブラジル人が大半を占める踊りの輪ができた。教会のミサや結婚式などの度に中断しつつも、繰り返し賑やかに盆踊りが行われた。
会場には同県人会の屋台が出て、焼きそばなどの日本食を提供。50メートルほどの長い列ができ、来場者は辛抱強く自分の番を待っていた。県人会関係者によれば、予想を上回る来場者で、材料が無くなってしまい、追加を買いに行くなどして対応している最中だとのことだった。
厚着をして会場の片隅に一人で座っていた佐藤輝子さん(76歳、2世)に話を聞くと、「50年前から毎年楽しみに来ています。独身の時には、私もよく踊っていました。昔は踊る人も日本人ばかりしたね。夫と出会ったのもこの盆踊りでした。結婚48年、昨年夫は白血病で亡くなりました」と寂しそうに教えてくれた。
博物研究家の故橋本吾郎氏の植物コレクションがサンパウロ大学に寄贈されたのをみに、神奈川県からたまたま来伯していた東京農大OBの松田パウロさん(66歳、横浜市出身)は、「昔、東京農大の収穫祭では相馬盆唄は1千人規模で盛大に踊りました。入学したら全員踊りを教わるゆかりの深い曲、そんな相馬盆唄が、まさかここでこんなに生き生きと踊られているのを見ることになるとは、想像もしていなかった」と驚いた様子だった。
かつてブラジル社会史・農業史の研究家の田尻鉄也さんと一緒にアグロ・ナッセンテ誌編集に関わっていた経験のある松田さんは、「日伯の文化融合は、田尻さんの夢だった。ここではそれがまさに実現しているのを目の当たりにしました」と微笑んだ。
サチエさんによれば、「この櫓は3回目ぐらいに時に作られ、それからずっと毎年使われている。釘を使わず、ネジだけで組み立てる本格的なものです」と誇らしげに語った。来場していた地元住民のジオゴ・ヴィラールさん(30歳)は「この時期にやるお祭りは、全てフェスタ・ジュニーナみたいなもの。大歓迎です」と喜んでいた。