浄土宗南米開教70周年=「南米開教区のさらなる発展を祈念」=飯田台下ら約70人が来伯

浄土宗南米開教70周年記念式典が、6日午後4時過ぎからサンパウロ市ピケリー区の南米浄土宗別院日伯寺で開催され、海外では初めてだという「総本山知恩院おてつぎ運動推進大会」も併せて執り行われた。式典には日本から、大本山清浄華院の第83世法主・飯田実雄台下をはじめとする宗門要職者約70人が来伯して出席。ブラジル各地の檀信徒合わせて約170人が一堂に会した。
式典の前に執り行われた法要では、宗歌「月かげ」に合わせて導師である飯田台下らが入道。読経を行い、「十念」では「南無阿弥陀仏」を10回、出席者全員で唱えた。
その後、飯田台下が垂示し、仏教が約2500年前にインドの釈迦から始まり、1175年に法然上人が「お念仏(南無阿弥陀仏)」の教えを説いた浄土宗開宗から今年で850年の節目に当たることを説明した。また、今年が日伯友好交流130年、南米開教70周年の記念の年であることと、1954年に特命開教使として渡伯した長谷川良信氏(故人)が南米開教区の初代総監として活動した経緯にも言及。宗教、教育、福祉の「三位一体」を基本理念とし、現在ブラジルにはサンパウロ市の日伯寺をはじめ、マリンガ、イビウーナ、クリチバの4カ所に寺院があることにも触れ、その理念が2代開教総監の佐々木陽明氏(故人)を経て、檀信徒らによって伝えられていることに喜びを表していた。
法要後の午後5時から開催された記念式典では、各地の護持会長などを務めた功労者6人に対して、知恩院の伊藤唯真門主からの感謝状を宗務総長の川中光教上人が代読、代表して寒野正留氏に授与された。
引き続き、檀信徒12人に対する川中上人からの感謝状を、佐藤エンリケ氏が代表して受け取った。さらに、南米開教総監である佐々木良法上人からの感謝状がブラジル4寺院代表に贈られ、代表して松本とみこ氏に授与された。
川中上人は祝辞で、ブラジルの日本移民・日系人の貢献を称賛。その上で、「浄土宗も諸外国の檀信徒の支えをいただき、信仰として確立されてきた中で、南米開教区のさらなる発展を祈念する」と述べた。
さらに、知恩院が推進する「おてつぎ運動」について伊藤門主の思いが代読され、「お念仏を唱えることで、お陰様と思えることが、おてつぎ運動。お念仏の、み教えが一人でも多くの方に伝えられれば」として、出席者全員で「南無阿弥陀仏」が唱えられた。
式典後は、飯田台下による書道のパフォーマンスが行われ、仏教の大切な考え方である「慈悲」の文字と、「祝福あれ」の意味合いがある「薩婆訶」の文字が書かれると、出席者から拍手が送られた。
1980年に初来伯し、今回で10年ぶり6回目のブラジル訪問になるという若王寺(滋賀県甲賀市)住職の前田晃秀さん(71)は、「(1980年)当時、15歳だった人(ブラジル在住檀信徒)が今や60歳になっていて驚きます。皆、懐かしい人ばかりです」と久々の再会を喜んでいた。
イビウーナ日伯寺の護持会長を務めた経験のある白旗信さん(89)と、夫人の諒子さん(82、ともに長野県出身)は「久しぶりにサンパウロの日伯寺を訪問しました」と話し、節目の法要と式典に出席して充実した表情を見せていた。