site.title

州議会選でミレイ大敗=汚職疑惑と経済停滞響く

2025年9月9日

万華鏡1
ハビエル・ミレイ・アルゼンチン大統領(Foto: Fórum Econômico Mundial/Ciaran McCrickard)

 アルゼンチンブエノスアイレス州で7日に実施された州議会選挙で、ハビエル・ミレイ大統領率いる与党は大差で敗北した。妹カリーナ氏をめぐる賄賂疑惑の音声流出というスキャンダルに加え、経済の停滞や支持率急落にも直面しており、政治的逆風が鮮明となったと同日付フォーリャ紙など(1)(2)が報じた。

 開票率95%超の時点で、ミレイ大統領率いる与党「自由前進党」が得票率33・8%にとどまり、47・2%を獲得したアクセル・キシロフ同州知事率いるペロン・キルチネル左派連合「フエルサ・パトリア」に負けた。

 今回の選挙は、州議会の議席の半数に当たる下院46議席、上院23議席が改選対象となったほか、地方議員や学校評議員も同時に選出される大規模なもの。フエルサ・パトリアは州内8選挙区のうち6区で勝利し、135の自治体のうち99以上を制して広範な支持基盤を示した。

 同州は全国の有権者の約4割が集中する最重要地域で、10月26日の国会議員中間選挙の前哨戦との位置づけだ。投票率は63%に達し、州民の高い関心がうかがえた。ミレイ氏は当初、得票率が拮抗する展開や5ポイント以内の接戦を見込んでいたが、約14ポイントの大差をつけられた。

 ミレイ氏はこれまで、インフレ抑制やペロン主義の退潮を背景に攻勢を強めていた。首都で行われた5月の地方選ではキルチネル派を破り、「キルチネル主義を本拠地で打ち砕く機会だ」と豪語していた。

 だが、選挙直前の8月20日、国家障害者庁(ANDIS)の前長官ディエゴ・スパニョーロ氏とされる人物の音声が流出し、障害者向け医薬品購入を巡る賄賂疑惑が浮上。カリーナ氏が3%のキックバックを受け取っていたとの証言が含まれ、政権への打撃となった。

 経済も足元で停滞傾向にあり、景気鈍化や金利上昇に加え、財務省による為替介入が強化されている。世論調査会社トレスプントセロによれば、ミレイ氏の支持率は39%にまで低下。国民の9割が今回のスキャンダル「カリナゲート」を認知しているという。

 ミレイ氏は選挙本部で「政治的に明確な敗北だ」と述べ、結果を受け入れる考えを示した。その上で、「我々が選ばれた改革路線は変えず、むしろ強化する」と語り、路線継続を強調した。

 一方、キシロフ知事は「投票箱が大統領に明確なメッセージを送った。公共事業の停止、年金削減、障害者支援や医療・教育・文化予算の削減は許されない」と訴え、勝利を誇示した。

 クリスティナ・キルチネル元大統領も自身のXで、「『二度と繰り返さない』という歴史の誓いを軽視し、敵の死や苦しみを嘲笑する姿勢は代償を伴う」と批判し、「障害者の薬から3%を奪うような行為こそ問題だ」と糾弾した。

 金融市場では選挙前から緊張感が高まり、政権の腐敗疑惑や厳格な緊縮政策への反発を背景に、主要株価指数メルバルは8月に14%超下落。選挙翌日、ルイス・カプト経済相は「財政・金融・為替政策に変更はない」と表明したが、ドルの非公式レート「ブルー・ドル」は1350ペソ近辺で推移しており、市場は依然として不安定な状態だ。

 キシロフ知事の判断により、今回の州議会選挙は2003年以来初めて全国選挙と切り離して実施された。彼は選挙後、州内外での政治的影響力が一段と強まった。現時点で多くのアナリストや報道が、キシロフ氏を「2027年の大統領選に向けた有力左派候補」として注目している。

 10月の全国中間選挙を前に、ミレイ政権は連続的に国政上の敗北を重ねており、今回の敗北は歳出削減を柱とする政策路線の継続にも影を落としている。選挙直前には上院で野党がミレイ氏の拒否権を覆し、障害者支援や医療・教育予算の増額を可決。政府との対立が一段と深まっている。


奥アマゾンに文明未接触部族=実数不明だが100部族以上とも前の記事 奥アマゾンに文明未接触部族=実数不明だが100部族以上とも
Loading...