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奥アマゾンに文明未接触部族=実数不明だが100部族以上とも

2025年9月9日

万華鏡2
ロンドニア州に居住する孤立先住民族「マサコ族」の姿を捉えた初の画像(Foto: Funai/Divulgação)

 アマゾン熱帯雨林の奥地に、外部との接触を拒み、独自の生活を続ける孤立先住民族が、実在が確認されているだけで28部族存在する。ブラジルは世界最大の孤立先住民族集中地帯として知られるが、その正確な数や居住実態は未だに明らかになっておらず、環境破壊や違法採鉱、気候変動といった現代的脅威が、彼らの生活と文化の存続を著しく危険にさらしていると5日付ヴァロール紙(1)が報じた。

 孤立先住民族の数について、国立先住民族保護財団(Funai)は114〜115、ブラジル・アマゾン先住民族組織調整(COIAB)は少なくとも120存在すると主張している。

 環境社会研究所の人類学者チアゴ・モレイラ氏は「彼らが実在するとすれば、その生活様式を維持するために国家による保護が不可欠だ」と強調する。Funaiの報告によれば、現在は28民族の実在が確証され、26民族を調査中、60民族については、情報はあるものの具体的な調査はなされていない。

 そもそも、孤立先住民族の実在確認は容易ではない。ほとんどの民族はアマゾンの広大な森林の奥に住み、他の先住民族との接触すら持たない。彼らは生活の痕跡や足跡を残すため、モレイラ氏は「この痕跡から存在を確認し、集団の規模を推定することは可能だ」と説明する。

 24年中頃には、Funaiが40年以上にわたる調査の末、北部ロンドニア州で孤立民族マサコ族の撮影に成功した。樹上に設置した監視カメラにより、文化保護区に指定された地域で彼らの姿がとらえられた。映像は本年初頭に公開され、年長者2人が率いる4人の若く健康な先住民の姿が確認され、マサコ族のコミュニティが拡大していることが裏付けられた。

 87年以前、Funaiは孤立民族との平和的接触を目指す方針を取っていたが、結果は悲劇的だった。死者の発生、新たな病気の流入、貧困の深刻化を招いたため、方針を転換。以降は「彼らが望んだ場合にのみ接触を行う」という原則を採用した。だが、多数の孤立民族で人口増加の兆候が確認されている。

 とはいえ、森林伐採、不法占拠、違法採鉱、開発事業、制御されない農業ビジネスなど多様な脅威が存在。Funaiの孤立・最近接触先住民族部門長マルコ・アウレリオ・ミルケン・トスタ氏は「彼らは多方面からの圧力にさらされている」と指摘する。

 一方、多くの人類学者や先住民関係者間でも、孤立民族が外界の存在を認識しつつも、あえて距離を保っているとの見方が共通の見解となっている。福音派の宣教師からは、Funaiがこれらの民族を保護するために「隔離の殻」を作り出しているとの批判もある。だが、北西部アマゾナス州ジャバリ渓谷に居住する先住民マルボ族代表ベト・マルボ氏は、「それは事実無根だ。孤立は彼ら自身の意思であり、満足している」と語る。

 ベト氏の言葉は、部族の経験故に重みがある。マルボ族が初めて外部と接触したのは19世紀末。ゴム採取者の侵入と、宗教宣教師の来訪は暴力、女性の奪取、男性の殺害、疾病の蔓延といった悲劇をもたらし、彼らの記憶に深く刻まれている。

 ジャバリ渓谷の先住民族は専用の居住区に暮らすが、決して安全が保障されているわけではない。漁業資源の争奪、麻薬密売、違法伐採など、経済的利害の衝突が続く。22年には、先住民活動家ブルーノ・ペレイラ氏と英国人ジャーナリストのドン・フィリップス氏が、麻薬組織と関係のある漁師に殺害される事件が起きた。

 モレイラ氏はさらに、地球温暖化による深刻な干ばつ、資源減少、雨季・乾季の周期変動が孤立先住民族に新たな脅威をもたらしていることを指摘している。 


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