「新国際秩序に進む合意得た」=BRICS臨時首脳会合で

【既報関連】ブラジル主催のBRICS首脳オンライン会合が8日に開催され、中国の習近平国家主席は、国際情勢の変化に対応するため、加盟国が相互に支え合う必要性を強調。ルーラ大統領も、違法な通商慣行や関税による「脅し」が常態化していると暗に米国を批判し、世界貿易機関(WTO)の再構築をBRICSが主導すべきだと訴えたと同日付ヴァロール紙(1)(2)が報じた。
ブラジル政府は、多国間主義への圧力が顕著であることを受け、加盟各国との早急な対話と連携が必要と判断し、今回の臨時会合を招集。現BRICSの11カ国の首脳および代表が参加した。
習氏は「強風は草の強さを露わにし、猛火は真の金をあぶり出す。我々が責任を負い、相互に支え合う勇気を持つ限り、BRICSという船は必ずや国際情勢の変化に耐え、未来に向かって揺るぎなく、そして確実に進み続けることができる」と述べ、国際環境の不確実性が増す中、BRICS諸国が結束を強め、共に責任を担う姿勢を持つことの重要性を強調したという。
ルーラ氏はこれに続き、より踏み込んだ調子で、BRICS諸国が「違法な」貿易慣行の犠牲となっていると主張。「関税による脅し」が常態化しているとの見解を示し、強く批判した。さらに、関税による脅しが「各国の内政に干渉する道具としても常態化している」と述べ、外国制裁の「域外適用」が各国の主権を脅かし、二次制裁が友好国との貿易強化の自由を制限していることを強く懸念した。
この対抗策としてルーラ氏は、来年開催予定の世界貿易機関(WTO)閣僚会議で、BRICSが「近代的かつ柔軟な枠組みに基づく多国間体制の再構築」を主導すべきであると提言。ブラジル政府は、現在のWTOは「米国によって事実上掌握されている」との見方を示し、過去数年間、米国寄りの指導者が相次いで同機関のトップに就任してきたことで、国際社会が一方的な措置に対抗して結束することが難しくなっていると評価している。
会合終了後、ルーラ氏は声明を発表し、「グローバル・サウスの要求により効果的に応えることが可能な、より公正でバランスのとれた包括的な国際秩序へと進む必要性について合意が得られた」ことを明らかにした。「一国主義的措置の強化に伴うリスクへの対応や、BRICS諸国間における連帯、協調、貿易拡大のメカニズム強化についての見解交換が行われた」ことにも言及した。
こうした国際環境の変化に関して9日付ヴァロール紙(3)は、米ハーバード大研究員で、ブラジル国際関係センター(Cebri)の国際諮問委員を務めるウセイン・カロウト氏の見解を紹介。同氏は、トランプ政権が推し進める保護主義的な関税政策が継続する限り、ブラジルと中国の関係は今後ますます重要かつ構造的に深化していくとの見通しを示した。
カロウト氏によれば、かつてブラジルは米中両国間のバランス外交を志向し、両大国と均衡のとれた関係構築を目指してきた。だが、トランプ政権による強硬かつ予測困難な関税政策がこの戦略に大きな打撃を与え、結果としてブラジルの対中接近を加速させる要因となっている。
ブラジルは依然として多方向外交の方針を維持し、中国を「戦略的かつ不可欠なパートナー」と位置づける一方で、米国も世界における重要な大国として認識しているものの、その外交・経済政策の不安定さがブラジルの外交計算に変化をもたらしていると分析する。
トランプ政権が課している関税措置は、国際貿易ルールに明確に反するものであり、これが影響を受けた国々に新たな同盟関係や政治的パートナーシップの模索を促す動機となっているという。同氏は「現状において、多様なパートナーシップの構築はもはや選択肢ではなく、国家戦略として必須の道」と強調。米国は引き続き国際秩序の重要なプレーヤーであるものの、その政策の不透明さや予測不能な側面に依存し続けることの危険性を警告し、ブラジルとしてはリスク分散のためにも他のパートナーとの関係強化を図るべきだと述べている。