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寄稿=ブラジル代表、強豪と激闘=WBC4試合現地観戦記 福田雄基

2026年3月17日

アメリカ戦 お祭り男として応援
アメリカ戦 お祭り男として応援

 ブラジルの子どもたちに野球道具を届ける支援活動を行っている福田雄基さん(34歳、千葉県出身)が、米国で開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)のブラジル代表戦4試合を現地観戦した。ブラジル代表は米国、イタリア、メキシコ、英国と対戦。試合の様子やブラジル代表に対する想いを寄稿してもらった。

 「ブラジル代表2026年WBC1次ラウンド出場決定」との吉報が入ったのは昨年3月のことでした。ブラジル代表は13年大会の1次ラウンド出場を最後に、17年、23年大会は無念の予選敗退となり、晴れ舞台への出場機会を逃してきていました。

 ブラジルの野球環境は未だ発展途上。代表選手達ですら練習球やバットの確保に悩んでいます。そこで昨年8月、日本で開催された少年野球の国際大会のために来日したブラジルの子どもたちや家族、野球連盟のスタッフの方々に、寄付活動で集めていた硬式ボールなどを代表チームに渡してもらえるよう託すことにしました。

 寄贈品の中には自腹で購入した木製バット20本も含まれており、その後、代表選手がそのバットを使用してくれていることを耳にし、嬉しい気持ちでいっぱいになりました。

 そんな折、ブラジル野球連盟の会長から米国ヒューストンで行われるブラジル代表戦のチケットを手配して頂けるとの連絡が。今年で10年目となるブラジルの子どもたちへの野球用具寄付活動の帰り道に米国を訪れ、ブラジル代表の応援をすることに決めました。

 代表チーム参加者リストを見れば、13年大会では代表選手だった親友の奥田ペドロがコーチとして参加し、大学の後輩の西山チアゴが選手として代表入りしており、代表チームへの期待は大いに高まりました。

 ブラジルに到着し、野球少年たちへの野球道具寄付活動の合間に、代表選手の練習にも顔を出しました。チームメンバーの表情は皆穏やかながら、大会を楽しみにしていることが仕草の端々から伝わってきました。

 3月5日、ブラジルでの活動を終え、米国へ。到着早々に翌日の試合会場となるテキサス州ヒューストンのダイキン・パークを下見に訪れたのですが、会場周辺は「本当に明日から大会が行われるのか?」と疑いたくなるほどの静けさ…。日本の盛り上がり様との違いに明日の試合の盛り上がりに一抹の不安を覚えました。

 しかし、大会当日を迎えてみれば、開場前から観客が長蛇の列を為し、会場は大きく賑わっていました。それもそのはず、この日の試合はアメリカ対ブラジル。観客のお目当てはもちろん有名メジャーリーガー達を擁するアメリカ代表です。ブラジル側からすれば完全にアウェーの雰囲気。それでも皆試合の開始を心待ちにしていました。会場は野球に対する純粋な熱気で包まれていました。


アメリカ戦 開会式がこれから行われる
アメリカ戦 開会式がこれから行われる

アメリカ戦


 試合は初回、米国の主将アーロン・ジャッジに2ラン本塁打を浴び先制を許しました。しかしその裏、ブラジルは若き主砲ルーカス・ラミレスがソロ本塁打で反撃。元メジャーリーガー、マニー・ラミレスを父に持つルーカスは、この試合で2本塁打を放つ活躍を見せました。

 ただ、試合が進むにつれて戦力差が浮き彫りになりました。米国はメジャーリーグの主力級選手が並ぶ打線に加え、150キロ台の速球を投げる投手陣など層の厚さが際立つ。

 一方のブラジルは、マイナーリーグや欧州リーグ、国内リーグなど多様な環境でプレーする選手が中心で、国際大会経験の差も大きい。投手陣はピッチクロックにも苦しみ四球を連発し、試合は5対15で敗れました。

 19四球と崩壊した投手陣でしたが、その中でも粘りを見せた打者陣。8回裏まで5対8と接戦に持ち込んだ集中力は、残りの3試合への期待点となりました。


イタリア戦前
イタリア戦前

イタリア戦


 イタリア戦でのブラジルは、相手が左投手だったことから右打者を多く並べて臨み、試合は中盤まで三塁すら踏ませない投手戦。

 イタリア代表とはいえ、ほとんどの選手がアメリカ国籍のメジャーリーグ経験者です。

 その打線を4回無失点に抑えたエンゾー・サワヤマの投球は素晴らしかったです。

 しかし、球数制限ルールにより投手が変わると、ここでも四球で流れが変わってしまいました。

 連続四球で走者を溜めた直後に適時打を浴びると、その後も本塁打で失点が拡大。結果は0対8の敗戦でした。

 投手戦の場合、先に崩れた方が負けます。流れを取り戻すには、打者3人をピシャリと抑えることが必要。いかにストライクを先行させ、テンポのいいピッチングをすることが出来るか。敗れはしましたが、大会で重要となる技術をチームとして学ぶことが出来たと思います。


イタリア戦ルーカス・ラミレスが刺殺した瞬間のスタンドの様子。中央に筆者(daikinparkインスタグラムより)
イタリア戦ルーカス・ラミレスが刺殺した瞬間のスタンドの様子。中央に筆者(daikinparkインスタグラムより)

メキシコ戦


 強豪との戦力差を改めて感じる試合となりました。

 メキシコはメジャーリーグ選手を多数擁する中南米屈指の野球国で、国内にも冬季リーグがあり、野球文化が深く根付いています。

 選手層や試合経験の面でブラジルとの差は大きく、試合でもメキシコ打線の猛攻を受け、守備の時間が長い展開となりました。

 一度火を吹いたメキシコ打線を止めることはできず、試合は0対16のコールドゲームとなりました。

 「メキシコのバッティング練習になってしまったのではないか」というほどの試合。ストライクゾーンに投げれば打たれ、厳しいコースは見極められてフォアボール。経験値の差を感じた試合でした。


イギリス戦


 お互い3敗同士で、負けた方はグループ最下位となる一戦。最下位チームは次回大会出場の際、1次ラウンドのための予選から出場しなくてはならなくなるため、両チームとも一際負けられない思いで試合に臨みました。

 ブラジルの先発投手はイタリア打線を4回無失点に抑えたエンゾー・サワヤマ。日本の社会人野球チームでの経験を活かし、ピンチでも落ち着いた投球を見せ、4回まで無失点。予想通りの投手戦になりました。

 なんとか先取点が欲しい。誰もがそう思っていたところ、ブラジルが今大会初めての先制点を挙げました。得点の瞬間はスタンドのブラジル応援団が大きく沸きかえりました。

 しかし、その裏、投手交代直後の初球を本塁打され、同点とされると、連打と四球で逆転を許し、最終的には1対8で敗れてしまいました。

 正直、勝てる試合でした。力の差はありません。強いていえば投手力。次回大会の課題が見えた最終戦でした。


ブラジル野球連盟のチアゴ・カルデーラ会長と
ブラジル野球連盟のチアゴ・カルデーラ会長と

ブラジル代表の課題


 大会を通じて浮き彫りになった最大の課題は投手の制球力でした。ヒット数はそれほど多くない試合でも、四球から流れを崩す場面が目立つ。ストライク先行で試合を作れる投手の育成がブラジル野球の今後の大きなテーマとなるでしょう。

 スコアだけ見ればどれも大敗しているように見えますが、私はそうは思いません。米国戦で2本塁打を放ったルーカス・ラミレスや、中軸を担うダンテ・ビシェットJr、キャプテンとして代表チームを支えるレオナルド・レジナットなど将来性のある選手は多く、希望も見えました。

 投手陣でもメジャー経験を持つチアゴ・ビエイラや、17歳で97マイルを投げるジョセフ・コントレラスなど若い力が台頭しています。結果だけを見れば厳しい大会でしたが、世界の強豪と4試合戦って得られた経験は、今後のブラジル代表にとって大きな糧となるでしょう。


◆筆者紹介

 福田雄基(ふくだ・ゆうき)。株式会社D-STRONG代表取締役。ブラジルの子どもたちに野球道具を届ける支援活動を2016年から続けている。これまでにボール約5000個、グローブ約400個などを寄贈。野球を通じた国際交流とブラジル野球の発展を応援している。


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