何をやっても許される?=モロ氏から透けて見える特権意識

セルジオ・モロ氏が危機にある。3月31日、モロ氏は突然、ウニオン・ブラジルへの党移籍を発表した。同氏はポデモス党から大統領選へ出馬することが確実視されていたので、この移籍宣言に世間は大きな衝撃を覚えた。
モロ氏はこの移籍を行うことで、ポデモス大統領選候補の地位を失う。コラム子含む多くの人がこの不可解な移籍を訝しんでいると、翌日にモロ氏は「大統領候補は諦めていない」と宣言した。ウニオンから大統領選候補として出馬するのかと思われたが、ウニオンが同氏の大統領候補任命を否定したことでモロ氏の大統領選出馬はかなり絶望的になった。
この騒動の原因は、ウニオンのルシアノ・ビバール党首がモロ氏を唆したことにあるという。ビバール氏はモロ氏に「ウニオンに移籍して、民主社会党(PSDB)と民主運動(MDB)の3党連合大統領選候補にならないか」と持ちかけていた。
モロ氏はこれに気を良くして移籍を決めたようだ。しかし、残念ながらウニオンでモロ氏を大統領候補にしたがっていたのはビバール氏だけで、モロ氏は連邦議員選出馬止まりにさせられそうだ。
誘ったビバール氏にも問題はあるが、モロ氏の行動も軽率だ。「それで本当に正義の判事だったのか」と思いたくなるほどだ。「党の他の人が反対しても、党首が押してくれるんだから何とかなるだろう」という甘い希望的観測があったと思えてならない。
さらに残念なことは、この移籍についてポデモス側には何の相談もしていなかったと報じられている。ポデモスは小政党だが、同党創設者のアルヴァロ・ジアス氏はモロ氏がパラナ州連邦地裁の若手判事だった時代からの十数年の付き合いで、モロ氏を政界に導いた恩人だ。すでに始めていたモロ氏の大統領選の準備も何百万レアルとかけていた。これをいくら「移籍した方が規模が大きくなるから」といって、簡単に裏切るとは。
これに限らず、モロ氏には以前から「自分なら許される」と考えている節があるようにコラム子には見える。ヴァザ・ジャット報道で暴露された、ラヴァ・ジャット判事時代の自身があたかも特捜班のトップであるかのような振舞いや、法相辞任後に、ラヴァ・ジャット作戦時に自分が裁いた企業をクライアントにする法律事務所に就職して高額報酬を得て、その金額を悪びれることなく公表して大統領選の支持率低下を招いたこと。今回の騒動もこれらとパターンが同じように思える。
仮にこれが、マスコミがモロ氏を「英雄」「ブラジルの救世主」と過度に持ち上げた結果だとしたら、なんとも皮肉ことだ。(陽)