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選挙後漂う「しらけムード」=糾弾されるべき者を知る国民

2022年11月11日

トラックにしがみつくボルソナロ支持者(Twitter)
トラックにしがみつくボルソナロ支持者(Twitter)

 大統領選が終わって10日ほどが経った。ご存知の通り、ルーラ氏がボルソナロ氏を僅差で破って当選。ボルソナロ政権に終止符が打たれた。支持率の差はわずか1・8%ポイント。票数にして210万票差と、伯国選挙史上最小の差だ。
 しかし、選挙後の国民全体のムードは、歴史的大接戦の後とは思えないほど落ち着いており、「しらけムード」と評してもいい様相だ。選挙後の緊迫感で言えば、2014年にジウマ氏がアエシオ・ネーヴェス氏を破った時の方が上に感じる。
 なぜこのような状況になっているのか。選挙後、ボルソナロ派の人々が連日のようにルーラ氏側の選挙不正を叫び、軍事介入すら直訴する場面が見られた。本来なら社会的緊迫感が高まるところだが、ほとんどのメディアが突き放したように扱い、ネット上でも「悪い冗談」と一笑に附すだけで本気にする人がほとんどいない。この「しらけムード」の原因は、多くの国民が「実際に不正を働いていたのは誰なのかを知っているぞ」と思っているところにある。
 一次投票後、投票に関する不正話が浮上してくるのは、ボルソナロ氏側のものばかりだった。企業トップが従業員から票を買い取ってすべてボルソナロ氏への票にしていたなどの苦情が選挙高裁に殺到。ボルソナロ陣営のネット放送や、ボルソナロ氏自身がテレビ番組で拡散していたルーラ氏に対する大量のフェイクニュース問題もある。これへの対処として選挙期間最終週にルーラ氏へ虚報否定のため独占的選挙放送時間が与えられたことは異例中の異例の出来事だ。
 そのほかにも、自陣営が選挙放送データをラジオ局に送らないことで生じた自身の選挙放送時間の短縮をメディアによる選挙不正と見せかけたこと、決選投票当日にルーラ氏の支持者が特に多い場所を狙って、選挙高裁が道路警察に禁じていた交通取り締まりを行わせ、ルーラ氏の支持者を投票に行かせなくする不正行為を行っていたことなどが報告されている。
 こんな状況で「ルーラ氏に不正があった」と叫んだところで説得力はない。こうした不正が無ければ歴史的接戦にもなっていなかったのではないだろうか。そしてまた残念なことに、これだけのことをしたにも関わらず勝利できなかったボルソナロ氏の情けなさが世間ではからかいの対象となってしまっている。
 抗議行動のレベルの低さも「しらけムード」の原因となっている。人々の交通の妨害を行い、ときには護衛の警察に暴力行為を働き、ナチスの表面的な真似事をする。軍に対して政治介入を求める行為などは、批判の対象を超え、馬鹿にされても仕方がない。
 ネット上ではやはり、抗議活動とその参加者を揶揄する動画が大量に作成、拡散されている。一例は、交通妨害中の大統領支持者が「ボルソナロ氏逆転当選」との虚報に湧きかえったところを、走行してきたトラックに押し出され、トラックの前面にしがみついたまま高速道を走らせされるというもの。こうした人たちを育てた責任はボルソナロ氏にあるのではないだろうか。(陽)


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