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支持者の燃え上りと大統領一家の燃え尽き

2022年11月18日

次男カルロス氏(Caio Cesar/Agencia Brasil)
次男カルロス氏(Caio Cesar/Agencia Brasil)

 大統領選から2週間以上が経過した。落選の現実が受け止められないボルソナロ大統領支持者たちは相変わらず抗議運動を展開しているが、当のボルソナロ大統領自身や大統領一家からは、抗議ムードを盛り上げようという気が感じられない。
 燃え上がる支持者とボルソナロ一家の意識の差は、選挙キャンペーン期間中から見られていた。特にそれが顕著だったのが次男のカルロス氏だ。同氏はボルソナロ家きってのネット隊長。2018年の大統領選時は、彼が何かとアイデアを繰り出した。彼のアイデアと「煽り」は、良くも悪くも新鮮で、選挙戦の話題となっていた。
 しかし、今回の選挙では大量のフェイクニュース攻撃こそやってはいたが、18年選挙時と比べると活躍は今一つ。それどころか、カルロス氏は体調不良で倒れ、病院に1日入院さえしていた。その後に参加したテレビ討論会では、顔色も悪く、無言でテレビカメラを避けるだけだった。「これでは支持者もエンジンがかかりにくいだろうな」と感じた。
 大統領からも「権力への固執」が伝わってこない。立場上、専制主義者的な振舞いを見せてはいたが、これまでも時折、「大統領ってこんなに疲れる面倒くさいものなのか」と取れる発言を行っていた。今回の選挙についても「再選の目的は逮捕逃れ。2期目への意欲のためではない」と報道されることがあった。
 落選後のボルソナロ大統領の様子は、2014年に大統領選決選投票でジウマ氏に僅差で敗れたアエシオ・ネーヴェス氏と比べ、その鼻息の荒さは比にならないほど弱い。
 「これまで等身大以上に虚勢を張ってきたが、落選したことでどっと疲労が出てしまったのでは」とそんな推測さえしてしまう。
 ボルソナロ支持者による抗議運動の空回りは、ボルソナロ氏の独裁者としての資質を過大評価しすぎたことから起こっているような気がしてならない。
 大統領一家の思惑を超え、支持者たちの方がボルソナロ氏本人よりもはるかに凶暴になっている。支持者らは政治への軍事介入を求め、軍支部前で直訴を行ったりしているが、大統領からはクーデターを起こそうという気配は感じられない。決選投票直前にロベルト・ジェフェルソン氏は銃撃事件を起こし、カルラ・ザンベッリ氏は銃器携行恫喝事件を起こした。抗議による社会的緊迫は生まれておらず、彼らの行為の反民主主義性や犯罪性が増しているだけだ。それもこれも、種を蒔いたのはボルソナロ一家自身なのが皮肉なところだ。(陽)


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