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リシャルリソンとジェズス=セレソンCFに明暗の差

2022年12月9日

リシャルリソンのオーバーヘッド・キック(Ricardo Stuckert)
リシャルリソンのオーバーヘッド・キック(Ricardo Stuckert)

 サッカーW杯は、準々決勝、準決勝、決勝戦を残すのみとなった。全日程が終了していない現時点でこのことを語るのに多少の憚りを覚えるが、今回はブラジル代表(セレソン)でセンターフォワード争いをしてきたリシャルリソンとガブリエル・ジェズス、この2人の明暗の差について述べさせてほしい。
 この2人は共に1997年生まれの25歳。10代の頃から世代を代表する存在だった。ジェズスは、19歳で出場したリオ五輪で金メダルを獲得し、その直後にセレソンレギュラー入りを果たした。一方のリシャルリソンは、ジェズスが早々の出世で参加する必要がなくなったU―20のセンターフォワードだった。
 ジェズスは、パルメイラス入団後、マンチェスター・シティに移籍と人気チームに所属。リシャルリソンは、アメリカMGからフルミネンセ、イングランドに渡ってもワットフォードからエヴァートンと地味なチームばかりを渡ってきた。
 現在でこそ、ジェズスはアーセナル、リシャルリソンはトッテナムと、共に名門チームの主力となっているが、出世争いと実績はジェズスに分があるように見えていた。
 だからリシャルリソンが背番号9でセレソンのセンターフォワードのレギュラーになると報じられたとき「チッチ監督は何を考えているんだ」との批判も少なくなかった。
 だが、そうした批判は初戦のセルビア戦ですべてが変わった。リシャルリソンがいきなり2ゴールを決め、そのうちの一発は世界中の度肝を抜いたあのオーバーヘッド・キックだ。この反響がとにかく凄かった。コラム子がブラジルに来て12年、口うるさいブラジルサッカーファンが「ロマーリオ、ロナウド、ロナウジーニョのRの継承者がついに現れた」「ロナウド以来のR9の誕生だ」と一つのプレイに大騒ぎし、酔いしれたところは見たことがなかった。
 対照的にジェズスはここまで2試合に途中出場、1試合に先発出場したが無得点。21歳で参加した前回18年大会からのノーゴールが継続している。さらに故障で戦列を離れ、この後も戻ってきそうにない。
 今やリシャルリソンの得点後のポンボ・ダンスがブームとなり、彼が行ってきた社会的言動や奉仕活動には尊敬の眼差しが向けられている。
 この二人に大きな実力差があるとコラム子は思わない。だが、どちらがブラジルサッカーファンに愛されているか、これだけははっきりした。どんな成績や実績よりも、大舞台でスーパープレイができる選手、これがブラジルでは愛されるのだ。
 一挙手一投足が愛されるようになったリシャルリソンを見るにつけ、大舞台での活躍の重要性と2人の明暗の差を痛感せずにはいられない。(陽)


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