《記者コラム》女性殺人は後を絶たず=終わりのない女性の戦い

家庭内暴力抑制のためのマリア・ダ・ペーニャ法は8月7日で発効から18年経ったが、恋人や夫、元夫による女性への暴行や殺人は後を絶たない(7日付G1サイト(1)参照)。
一例は、27日にミナス州で起きた、4歳の娘の前で妻を射殺した男性が、遺体の写真をSNSに掲載後、自殺を図ったが死に切らず、逮捕された事件だ(27日付G1サイト(2)参照)。
26日にはリオ市でも、夫からの暴行で何度も被害届を出していた女性が、バイクで乗り付けた夫から「お前を殺すつもりだ」とからかわれ、「そんなバカなことをするほど狂ってないでしょ」と応えたところ、夫が刃物を持って戻ってきて、息子の前で何度も女性を刺すという殺人事件が起きている(26日付G1サイト(3)参照)。
女性殺人は通常の殺人事件より刑が重いが、犠牲者は一向に減らない。ロンドリーナ州立大学の集計によると、今年上半期の女性殺人の犠牲者は905人、殺人未遂の犠牲者は1102人だった。この数字は州保安局や州保健局の数字に通報数を加えており、公式の数字より多いが、国家治安情報システムの数字でも685人が死亡しており、史上最多だった23年の1463人(6時間に1人が死亡)を大きく下回る可能性はない(26日付SBTニュースなど(4)(5)(6)参照)。
23日付アジェンシア・ブラジルなど(7)(8)によると、女性省は今月、他の省庁とも協力し、「女性殺人撲滅キャンペーン」を始めたが、企業やサッカークラブにも協力を求めたのは、サッカーの試合が多い日曜日や水曜日は女性が暴行されたり脅迫されたりする可能性が20%高いからだ。
女性は日頃から男性の3~5倍努力しないと男性と同等の評価を受けられないといわれており、出産、育児、生理が重いなどの理由で学歴に見合う仕事が与えられない例や、キャリアの中断、昇進の遅れが起きる例も多い。託児施設などがなく、出産後の職場復帰を諦める人も少なくない。経済的な基盤が弱い上、体力的にも対抗できないため、家庭内暴力を受けても泣き寝入りしている人や離婚できない人も多い。
女性殺人や女性への暴行は、女性を自分だけのものにしておきたい人や、自分より弱い立場の女性に肉体的・精神的な苦痛を与えることで鬱憤を晴らそうとする人、欲求が満たされなかったりすると自分を抑制できなくなる人のエゴが招いている事件ともいえる。自分が女性の権利や人格をないがしろにしていることに気づいてすらいない人もいるが、果たしてその人数はどれほどだろうか。
連邦議会では女性殺人厳罰化が審議されているようだが、家庭内暴力などを理由に保護を求め、認められてもなお、殺される女性がいることや、前回の厳罰化でも女性殺人は減っていないことを考えれば、性差故に生じる暴行、蛮行が厳罰化だけで解決しないことは明らかだ。結婚時の誓約を思い出し、互いの尊厳や違いを認め、他者を生かし、他者と共に生きることや、自分を愛し、他者を自分同様に愛することを学ぶことで、悲しい事件減少への第一歩を踏み出して欲しいと改めて願う。(み)