ベネズエラ麻薬対策でなく侵攻?=米軍艦8隻をカリブ海に展開

【既報関連】米政府は麻薬取締を名目に、軍艦8隻と約4500人の兵力をカリブ海南部に派遣し、ベネズエラへの圧力を強めている。米国はマドゥロ大統領を犯罪組織の指導者と断定し、逮捕につながる有力情報に報奨金をかけているが、介入の是非は公式に否定も肯定もしていない。一部専門家は、米軍の装備は単なる麻薬対策ではなく、攻撃・侵略を意図したものと分析。米側は空爆や軍事介入の可能性も排除しておらず、両国の緊張は一層高まっていると2日付G1など(1)(2)が報じた。
マドゥロ氏は1日、カリブ海を航行している米海軍の8隻の艦艇が「我が国に向けられている」との認識を示した。中には7隻の戦闘艦艇、1隻の攻撃型潜水艦、合計約1200発のミサイルが搭載されているという。同氏は、もし侵略があれば直ちに「国家領土と歴史、国民の防衛のための武力闘争」に入るとの強い決意を表明した。
米国は8月中旬、トランプ政権下でカリブ海南部に複数の軍艦、潜水艦、偵察機を派遣し、約4500人の兵力を配備した。米国側はこの動きを麻薬密輸組織への対抗と説明しているが、その規模と装備は攻撃的な性格を持つとの分析が強い。
ベネズエラは世界最大級の石油埋蔵量を誇り、今年の世界エネルギー報告によると、約3023億バレルで世界1位を維持している。米国はこの豊富な資源にも強い関心を示しており、トランプ氏は23年、「もし20年の選挙に勝っていたら、ベネズエラを奪い、石油を手に入れていただろう」と発言。こうした背景も米軍の動きに影響を与えている可能性がある。
今回米国が派遣した艦艇には、最新鋭のアーレイ・バーク級駆逐艦であるUSSグレーヴリー、USSジェイソン・ダンハム、USSサンプソンが含まれている。これらの艦艇は、イージス戦闘システムと多機能レーダーAN/SPY―1を搭載し、トマホーク誘導ミサイルをはじめ90発以上の各種ミサイルを装備している。トマホークミサイルは数100キロメートル先の目標を精密攻撃可能だ。
USSレイク・エリーはティコンデロガ級のミサイル巡洋艦であり、防空および弾道ミサイル防衛を主な任務とする。約90セルの垂直発射装置を備え、トマホーク巡航ミサイル、標準ミサイルSM―2、SM―3、対艦ミサイルハープーンなど多様な兵器を搭載している。ヘリコプターの発着にも対応する装備を持つ。
揚陸作戦能力を有する艦艇としては、サンアントニオ級のUSSサンアントニオおよびUSSフォートローダーデールが配備されている。これらは海兵隊員や車両、装備の輸送および上陸作戦を担い、水陸両用の支援を目的としている。全長200メートル超、満載排水量2万トン超の大型艦艇であり、ヘリコプターや揚陸艇の運用を通じて陸上戦力の展開を海上から支援する役割を持つ。
ワスプ級の揚陸攻撃艦USSイオー・ジマは、F―35Bなどの短距離離陸・垂直着陸型戦闘機が離・着艦でき、航空・地上戦力の統合運用を可能にしている。多様な航空機と海兵隊を搭載し、複合的な上陸作戦に対応できる能力を有す。
潜水艦部隊としては、ロサンゼルス級のUSSニューポート・ニューズが参加している。89年から活動を続けるこの原子力潜水艦は、潜水戦、諜報活動、精密攻撃作戦を行う。深度約290メートルまで潜航可能で、乗組員は士官約13人、兵員約121人。高度な魚雷およびトマホーク巡航ミサイルを搭載し、水上艦艇や潜水艦、陸上目標の攻撃が可能だ。
米政府は介入の可能性を正式に否定も肯定もしていないものの、マドゥロ氏を麻薬密輸組織「カルテル・デ・ロス・ソレス」の首領とみなし、同政権をテロ組織として位置づけている。米国はマドゥロ氏本人に対し5千万ドル(74億円相当)の報奨金を提示し、司法追及を強化している。米メディアの報道によれば、トランプ政権は「複数の軍事的選択肢」を検討しており、将来的な侵攻も排除していないとされる。
専門家は今回の米軍の配備について、単なる麻薬取締作戦としては過剰な規模だと指摘。米国の軍事学者カルロス・グスタボ・ポジオ氏は、送られた装備は「予防や麻薬カルテル対策のためのものではなく、明らかに攻撃および侵攻を目的としたもの」と分析。ブラジル海軍の政治戦略研究センターの協力研究員で、政治学博士のマウリシオ・サントロ氏も、当面のところ地上侵攻は実行困難としつつも、空爆の可能性はあるとの見解を示している。