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ルーラがBRICS首脳招集=国際秩序再編に連動して

2025年9月4日

万華鏡2
24年10月、ロシアで開催されたBRICS首脳会議に参加した中国、ロシア、インドの各国首脳(Foto: Kremlin)

 世界貿易機関(WTO)の機能不全に対処し、多国間の協調体制を立て直すことを目的として、ルーラ大統領はBRICS首脳によるオンライン会合を8日に招集する。米国による一方的な関税措置が国際貿易の枠組みを揺るがす中、ブラジルは制度改革を通じた対抗を図る。今回の動きは中国、ロシア、インドが模索する新たな国際秩序構想との連動性も指摘されていると1日付CNNブラジル(1)が報じた。

 今回の臨時首脳会合は、ブラジルが25年のBRICS輪番議長国を務める中で主導する一連の外交活動の一環だ。ブラジル政府は主要議題として「多国間主義の擁護」を掲げ、「国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)に向けたBRICS間の連携強化」も議題に含まれるとしている。参加対象には、原加盟国の5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に加え、新規加盟国のサウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦、エチオピア、イラン、インドネシアの参加も想定される。

 ルーラ氏はすでに、中国の習国家主席、インドのモディ首相、ロシアのプーチン大統領らと個別に電話会談を行い、フランスのマクロン大統領やメキシコのシェインバウム大統領とも接触を重ねてきた。これらの対話は共通して多国間主義の重要性、貿易の多角化、パートナーシップ強化といった主題に集中している。

 ルーラ政権は、トランプ米大統領による大規模な関税措置への対応を、WTO改革の推進における中心課題として位置づけている。7月にリオ市で開催されたBRICS首脳会議では、加盟国によって「一方的な保護主義措置の導入」を非難する共同声明を採択しており、今会合もその延長線上にある。

 マウロ・ヴィエイラ外相は先週、サンパウロ州工業連盟(FIESP)主催のイベントにおいて、「WTOの構造改革を議題とする対話を各国と開始している」と明らかにした。同外相によれば、米国の関税措置の影響を受けた複数国との協議において、「多国間貿易体制の劣化に対する懸念」「大国による圧力にさらされやすい非対称な二国間交渉の危険性」が共有されたという。

 ブラジル政府はWTOの抜本的な構造改革、「現代的かつ柔軟な制度設計に基づく再設立」を提唱しており、今後の議論の枠組みとして提示する予定だ。現在、WTOの紛争解決機関は、米国が上訴機関の構成メンバーの指名を拒否し続けていることで、事実上機能停止の状態にある。

 この状況下で、ブラジルは他の貿易相手国との連携強化を急いでおり、8月にはメルコスルとカナダ間の自由貿易協定交渉の再開を発表した。ジェラルド・アルキミン副大統領兼商工開発相はメキシコを訪問し、既存の経済協定の深化と新たな協力分野の模索を行ったほか、近くインド訪問を予定している。

 この動きは、BRICS内外で進む国際秩序の再編とも軌を一にするとみられている。習氏は1日、中国・天津市で開催された非西側世界の協力の枠組み「上海協力機構(SCO)」拡大会合で、「グローバル・ガバナンス・イニシアチブ(GGI)」を提唱。冷戦思考や覇権主義、保護主義を批判し、「多国間協議と共同貢献に基づく国際秩序の再構築」を訴えた。この場にはプーチン氏とモディ氏も出席していた。(2)

 モディ氏は7年ぶりに中国を訪問。中国側は「インドと中国の関係は改善の軌道にあり、両国はパートナーであって競合相手ではない」とする声明を発表した。

 習氏はSCO諸国に対して総額2億8千万ドルの支援を表明し、グリーンエネルギー、人工知能、麻薬対策など多分野での協力を呼びかけた。ロシア側は中国によるグローバル・ガバナンス構想へ全面的な支持を表明、「より公正な国際システムの構築に向け、SCOが主導的役割を果たしうる」と述べている。

 今回のBRICS会合はこうした中露印の動きとも呼応する形で、グローバル・サウス諸国の経済的自立と制度的発言力の確立に向けた転換点と位置づけられる。BRICS拡大による地政学的再編とWTO改革という制度的課題が交錯する中、ルーラ政権の主導が具体的成果に結びつくかが注目される。


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