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「米兵よ、トランプに従うな」=ペトロ大統領の査証取り消し

2025年9月30日

万華鏡2
NYで開かれたパレスチナ支持の抗議集会でメガホンを手に訴えるコロンビアのペトロ大統領(instagram @gustavopetrourrego)

コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領が、国連総会への出席のために米ニューヨークを訪問中、現地で親パレスチナ集会に参加し、米軍兵士へ「トランプの命令には従うな」と呼びかけた。これを受け、米国務省は27日、「軽率かつ扇動的な行為」に当たるとして、同大統領の査証を取り消す措置を講じた。ペトロ氏は、トランプ政権の対ベネズエラ政策やイスラエル支援を強く批判しており、両国間の緊張は移民問題や貿易措置にも波及していると27日付イスト・エ誌など(1)(2)(3)(4)が報じた。

ペトロ氏は、同集会でメガホンを手にスペイン語で演説し、「私は米軍の全兵士に対し、人類に銃口を向けるのをやめるよう訴える。トランプの命令には従わず、人道の命令に従ってほしい」と声を張り上げた。

同氏は、国連総会での演説においても、トランプ政権がカリブ海で実施した、麻薬取引に関与しているとされるベネズエラ船舶への空爆を「暴力による支配の手段」として強く非難し、民間人を含む犠牲者が出た責任を追及するべきだと訴えた。コロンビア人が犠牲者に含まれている可能性があるとし、「トランプ氏は刑事訴追されるべきだ」とまで言及。米政府が麻薬密売組織と結託していると主張し、BBCの取材に対して、この空爆を「暴政の行為」と断じた。

イスラエルによるガザ地区への軍事攻撃についても、ペトロ氏は以前から一貫して反対の立場を取っており、イスラエルを「ジェノサイド(集団殺害)を行う国家」と位置づけ、その支援を継続する米国の責任を指摘していた。演説内では、トランプ氏を「パレスチナ人に対する虐殺の共犯者」と名指しで非難する場面もあった。同氏は、国連決議への米国の拒否権行使や入国制限に対抗する形で、「国連本部はニューヨークから移転すべきだ」とも主張している。

ペトロ大統領は査証取り消しが発表された27日夜にはすでにボゴタへの帰路についていた。同日、自身のXで「ボゴタに到着後、米国の査証が無効になったことを知った」と投稿。「パレスチナ権力機関が米国入国を拒否されたことと、自身の査証取り消しは、私が米軍とイスラエル軍に『ジェノサイドを支持するな』と訴えたためだ。これは国際法違反だ」と強調した。

一部のコロンビア政府関係者は、国家元首に対する査証の取り消し措置は、外交特権の侵害にあたると主張している。

アルマンド・ベネデッティ・コロンビア内相は同日、自身のXで「査証を取り消されるべきなのはイスラエルのネタニヤフ首相の方だ」と述べた上で、「だが、帝国(=米国)が彼を保護しているがゆえに、本当のことを面と向かって言った唯一の大統領に対して報復している」と非難の言葉を投稿した。

一方、トランプ氏は直接のコメントを避けているものの、関係者の話として、コロンビア政府が米国との麻薬取締協定の義務を履行していないと認識していることが報じられている。

両国関係の緊張は以前から表面化しており、本年初頭には、米国からコロンビアへの移送を予定していた2機の軍用機が、強制送還対象となった移民を乗せてコロンビア国内に着陸しようとしたが、同国政府の決定により着陸が拒否される事態となった。ペトロ氏は、米政府による自国民の扱いに強い不満を示しており、今回の査証取り消しもその延長線上にあるとの見方がある。

こうした対応に対し、米政府は複数のコロンビア高官に対する査証の取り消しを実施し、コーヒーの主要生産国であるコロンビアに最大25%の追加関税を課す方針を示していた。一方、コロンビア側も米国製品への関税措置を発表し応酬が続いたが、その後、当時のルイス・ヒルベルト・ムリージョ外相が、国外退去となった自国民を受け入れる方針を示したことにより、米国側は追加制裁の実施を見送る意向を明らかにし、いったん事態は沈静化していた。


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