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暗号資産でブラジルが中南米牽引=前年比で2倍強の大幅増

2025年10月4日

万華鏡1
暗号資産の視覚的イメージ(Foto: Traxer/Unsplash)

米ブロックチェーン分析会社チェイナリシスの最新報告によれば、ブラジルでは24年7月〜25年6月の1年間で約3188億ドル(約46兆8636億円)相当の暗号資産が取引され、前年同期比で約110%の大幅な増加となった。とりわけ、法定通貨に価値が連動するステーブルコインの利用が取引全体の9割以上を占めており、個人投資家・機関投資家の双方で利用が拡大中だ。こうした動きを背景に、ブラジルは中南米地域における暗号資産導入の先頭に立っていると2日付ヴァロール紙など(1)(2)(3)が報じた。

ブラジルの年間取引額は、アルゼンチン(939億ドル)、メキシコ(712億ドル)、ベネズエラ(446億ドル)、コロンビア(442億ドル)を大きく上回り、中南米地域において断トツの首位を維持する。一方、同地域全体では22年7月〜25年6月までの3年間で、約1兆5千億ドルの暗号資産が取引されており、月間取引高では22年7月の208億ドルから、24年12月には877億ドルと4倍以上に増加するなど、全体として上昇傾向にある。

チェイナリシスはこの顕著な成長要因として、ステーブルコインの活用拡大を挙げており、「ブラジルの暗号資産市場は広範かつ一貫した成長を示している。機関投資家による取引活動の活発化に加え、小口投資家による各取引額帯でも成長が見られ、リテール市場の成熟と日常的な利用の拡大が顕著だ」と指摘している。

ステーブルコインは支払いや国際送金において重要な役割を果たしており、ブラジルにおける暗号資産取引の9割以上を占める中心的存在となっている。ステーブルコインは、法定通貨やコモディティなどの実物資産に裏付けられた暗号資産であり、米ドルとの為替レートを一定に保つ「ドルペッグ制」ステーブルコインが世界的に広く普及している。

グローバル市場におけるステーブルコインの時価総額は約3200億ドルに達し、その中で最大規模を誇る米ドル連動型ステーブルコイン「テザー(USDT)」は、約1750億ドルの市場占有率を有している。これらのステーブルコインは、世界全体で1日平均、約1千億ドルの取引が行われており、暗号資産経済における中核的役割を担っている。

報告書はまた、中南米におけるステーブルコイン需要の背景として、同地域特有の経済環境を挙げている。インフレの持続、為替レートの不安定さ、資本規制の強化といった要因が、安全な価値保全手段としてのステーブルコインの利用を後押ししている。中南米は国際送金の主要ルートの一つであり、迅速かつ低コストな送金手段としても暗号資産のニーズが高まっている。

一方で、中南米地域における暗号資産取引の約64%は、中央集権型取引所(CEX)を通じて行われており、自己管理型ウォレットや分散型エコシステムでの取引は依然として限定的だ。この割合は中東・北アフリカ地域(66%)に次いで高く、北米(49%)、欧州(53%)を上回る。

チェイナリシスは、ブラジル暗号資産市場の成長には、規制環境の整備も重要な役割を果たしていると分析。ブラジルでは中銀による複数の規制関連公聴会が進められ、22年〜23年にかけて「仮想資産法」が施行されている。また、25年末までには更なる規制整備が見込まれており、中銀が仮想資産サービス提供者(VASPs)に対するマネーロンダリングおよびテロ資金供与対策(AML/CFT)の主管当局となる見通しだ。

こうした制度整備を背景に、銀行大手のイタウをはじめ、フィンテック企業のメルカド・パゴや中南米最大のネット銀行のヌーバンクといった企業が暗号資産関連サービスの提供を本格化しており、機関投資家による市場参入も加速する。

チェイナリシスの「25年版グローバル暗号資産導入指数」において、ブラジルは世界のトップ5にランクインしており、中南米のみならず国際的にもその存在感を高めている。



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