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ベネズエラ軍は〝張子の虎〟⁈=老朽化ロシア兵器に頼る防空

2025年11月4日

万華鏡2
ベネズエラの主権防衛のために動員された民兵(Foto: RS/via Fotos Publicas)

米国による軍事攻撃の可能性が高まる中、ベネズエラのマドゥロ政権は防衛体制の強化を誇示している。だが、25年にわたる社会主義革命体制の下で軍事力は著しく劣化し、装備や士気の両面で深刻な限界を抱えていると専門家は指摘。情報機関と軍の焦点は国防ではなく、国内の反体制派の抑え込みに置かれており、体制維持が最優先となっているのが実情だと3日付ヴァロール紙など(1)(2)(3)が報じた。

米国艦隊による攻撃は、麻薬取締作戦の一環とされるが、3隻の駆逐艦や上陸用舟艇を含む大規模な構成から、実際にはマドゥロ政権の転覆を狙ったものとの見方もある。10月15日には、トランプ氏自身が「麻薬密輸を地上で阻止する」と述べており、地域の緊張はさらに高まった。9月以降、米軍は麻薬密輸に関与したとされる15隻以上の船舶を撃沈し、少なくとも64人が死亡。

米政府は、マドゥロ氏がベネズエラ軍幹部と連帯して麻薬密輸組織「カルテル・デ・ロス・ソレス」を率いていると主張。また、24年の大統領選において不正があったとも訴えており、こうした主張が今回の攻撃の背景の一つとなっているとされる。

軍事専門家らは、米国の攻撃が実際に行われる場合、限定的なミサイル攻撃、指導層の拘束作戦、1989年のパナマ侵攻に似た全面介入という三つのシナリオを想定している。

限定攻撃を行う場合、まずベネズエラの防空網を破壊する必要がある。マドゥロ氏はテレビ演説で、ロシア製携帯式ミサイル「イグラ」5千基を兵士に配備すると発表し、対米防衛の構えを誇示したが、専門家は「射程が短く、実際の脅威にはなりにくい」と指摘。

ベネズエラの防空体制はロシア製兵器に依存し、スホーイ社製のSu30MK2戦闘機を中核とする多層防空システムを構築している。Su30は南米でも最強クラスの戦闘機とされるが、事故や部品不足により、稼働機数は不明だ。防空ミサイルは長距離用S300、中距離のBuk、中・低高度用Pechoraなどで構成され、最新衛星画像では首都カラカスの空軍基地にBuk発射機が配備されている様子が確認された。
一方、米軍はステルス多用途戦闘機F35やF/A18E/F(スーパーホーネット)、爆撃機B52などを展開し、航空戦力は世界でも最強クラスだ。米軍は作戦初期、敵の地上配備型防空システムを制圧するSEAD(敵防空網制圧)を最優先任務としており、ベネズエラ防空システムは真っ先に標的となりそうだ。

迅速な拘束作戦が実施される場合には、マドゥロ氏らが滞在するとされるカラカスのフエルテ・ティウナ軍事基地が主要目標だ。米海軍特殊部隊を輸送できる特殊部隊支援船「MVオーシャン・トレーダー」が作戦に投入される可能性もある。

一方で、マドゥロ政権は大規模演習を相次いで実施している。9月にはラ・オルチラ島に12隻の艦艇と22機の航空機、2500人の兵士を展開したが、専門家は「装備の整備状況は不明で、実戦的な意味は乏しい」とみている。
国際戦略研究所(IISS)の「世界軍事バランス2024」によると、ボリバル国軍(ベネズエラ軍、FANB)は世界145カ国中50位の軍事力を持つとされる。陸軍6万3千人、海軍2万5500人、空軍1万1500人、国家警備2万3千人で、総兵力は約12万3千人だ。装備の多くはロシア製で、T72戦車やBMP装甲車、S300防空システム、カラシニコフ小銃などが含まれる。だが、25年にわたる社会主義体制の下で経済は疲弊し、インフレや資金不足で軍の維持費が不足、訓練や士気の低下も深刻だ。

この状況のなか、約800万人が国外に流出し、徴兵対象年齢層の若年層が大量に失われた。ベネズエラの防衛力は「数の上では強大だが、実態は老朽化と空洞化が進む軍」との評価が定着している。

マドゥロ氏は450万人規模の民兵組織を「国民防衛の柱」と称して動員を進めているが、専門家は「実際の戦闘力はほぼ皆無で、国内統制のための監視・威嚇ネットワークとしての役割が大きい」と分析している。

ベネズエラ軍の装備は書類上や外見上は充実しているように見えるが、実際には多くの兵器が老朽化しており、訓練不足や給与の低さから兵士の士気も低いため、「張子の虎」との見方もある。米軍の攻撃に対してどの程度機能するかは極めて不透明だ。


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