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適切な言葉を選ぶ難しさ=「ヘルパー」と「助け手」

2022年9月29日

ミシェレ氏とジャンジャ氏(左から、21日付UOLサイトのコラムの一部)
ミシェレ氏とジャンジャ氏(左から、21日付UOLサイトのコラムの一部)

 ボルソナロ大統領の妻のミシェレ氏が14日、リオ・グランデ・ド・ノルテ州ナタル市での女性向けイベントで、「女性は夫のヘルパー(Ajudadora)でなければならない」「私は『精神的』でジャイール・ボルソナロは『技術的』だから互いを補完し合う」と語った。これを受け、翌15日に、対立候補のルーラ氏の妻ロザンジェラ・ダ・シルヴァ氏(通称ジャンジャ、社会学者)が「私はあなた(ルーラ氏)のヘルパーにはならない。私はあなたの傍にいて共に戦う」と選挙キャンペーン中に語り、両者の意見の対比に注目が集まった。

 ミシェレ氏が熱心なクリスチャンである事を考えれば、「ヘルパー」を創世記2章17節の「ふさわしい助け手」という意味で使用した可能性はある。しかし、コラム子の手元の聖書では、「ふさわしい助け手」には、「Auxiliadora」という言葉が使われている。
 記事を書いたり、訳したりする時、どんな言葉が最適かといつも悩む。例えば「Auxiliadora」には家庭内労働者や、子供が親を助けるなどの意味合いが含まれているとの説があるが、「神は私を助ける方」という日本語の表現を「神は私のAuxilio」と書いているポ語聖書もあり、「Auxiliadora」にはただの「ヘルパー」以上の意味があるともいえる。「私を助ける方」を「Ajudador」と訳した聖書や「エヴァは神がアダムに送ったふさわしいAjudadora」と説いている牧師がいる事もわかり、一様に判断は難しいものとわかっていても頭を抱えてしまう。
 さて、ボルソナロ氏が福音派と女性からの票を得るための懐刀と頼むミシェレ氏のことであるから、「Ajudadora」という言葉も熟考の末に選んだものなのだろう。
 しかし、ミシェレ氏のこの夫への手助けも、9月7日の独立記念日にボルソナロ氏がミシェレ氏を見ながら「未婚の男性はプリンセーザを探せ」などと語った事を知る人には、「Ajudadora」という言葉には、ボルソナロ氏の抑圧的な女性観や家庭観が反映されているとネガティブな捉え方をされてしまっている。
 真の「助け手」になるには相手と同等か、それ以上の力量が必要であるとの話も聞く。言葉には人の心を動かす力もあるが、人の心を閉ざす力もあるのだなと改めて感じた。(み)


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