【9日の市況】イボベスパ指数が前日比0.33%安の13万5,655.06で4営業日続落=財政懸念とIOF見直しで投資家警戒感
6月8日のブラジル株式市場は、主要株価指数のイボベスパ指数が前日比0.33%安の13万5,655.06で取引を終え、4営業日続落となった。指数はこの日447.04ポイント下落し、直近14営業日のうち10営業日が下落と軟調な展開が続く。背景には、政府が検討中のIOF(金融取引税)に関する見直しや、それに伴う課税強化への懸念がある。
この日、注目されたのはフェルナンド・ハダジ財務相が連邦議員らと行った会談で、政府が打ち出した財源確保のための新たな課税方針だった。具体的には、現在所得税が非課税となっているLCI(不動産信用証券)およびLCA(農業信用証券)などに対して、源泉課税5%を導入する法案を進める意向が示された。
IOF見直しに向けた4つの柱
ハダジ財務相によれば、政府の対応策は「4つの柱」に分かれるという。具体的には、(1)金融市場向けの歳入措置を含む暫定措置法(MP)の導入、(2)IOF政令の調整、(3)税制優遇措置の見直し、(4)一次支出の制限である。LCI・LCAへの課税強化のほか、配当相当利益であるJCP(資本報酬金)への課税引き上げも含まれる。
証券会社XPによると、LCIとLCAに対する課税強化のみでも、政府の歳入は年間180億レアル(約5,200億円)増える可能性があるという。ただし、REIT(不動産投資信託)や農業ファンド(Fiagro)など、これまで非課税であった他の投資商品も対象に含まれる可能性がある。
政界・市場の反応は慎重
政府案に対しては、議会内から慎重論が相次いだ。農業議連を率いるペドロ・ルピオン下院議員は「LCIやLCA、インフラ債など、機能している資金調達手段に対する課税強化は受け入れられない」と明言。また、上院に属する独立財政機関(IFI)のペスタナ事務局長は「こうした措置は短期的な歳入対策に過ぎず、長期的な財政再建には繋がらない」と指摘した。
XPのチーフエコノミスト、カイオ・メガリ氏は、「歳出拡大に対して税収増で対応するモデルは限界に近づいており、本質的な問題である歳出削減は先送りされる可能性が高い」と警鐘を鳴らす。
ハダジ財務相との会談に参加した下院議長ユーゴ・モッタ氏も、「政府の提案に対して議会側は承認の約束はしていない」と明言した。さらに、「このままではブラジルも"シャットダウン"(政府機能停止)を経験しなければ誰も動かないのでは」との見解も示された。
米中会談報道で下げ幅縮小
イボベスパは一時1%を超える下落を記録したが、ロンドンで米中が通商政策を巡り協議を行ったとの報道を受けて買い戻しが入り、終盤にかけて下げ幅を縮小した。為替市場では、ドルが一時上昇したものの最終的には0.14%安の1ドル=5.562レアルで終了。金利先物(DI)も全般的に低下した。米国の主要株価指数は、小幅ながら上昇して取引を終えた。
企業動向:素材株や航空株に明暗
個別銘柄では、鉄鉱石価格が中国で軟調に推移した影響で、鉱山大手ヴァーレ(VALE3)が一時下落したが、終盤にかけて反発し0.59%高と4日続伸。一方、石油大手ペトロブラス(PETR4)は1.55%安。国際原油価格の上昇が下支えとなったが、アナリストによる投資判断引き下げが売り材料となった。
鋼鉄大手ゲルダウ(GGBR4)は6.41%高と急伸。大手金融機関による投資判断引き上げが材料視された。同社の持株会社メタルジカ・ゲルダウ(GOAU4)も5.21%高。教育関連ではイードゥクス(YDUQ3)が1.23%高、アニマ(ANIM3)が4.30%高と堅調だった。EAD(遠隔教育)関連の改革を追い風と見る買いが入った。
一方、金融株は軟調な展開。ブラデスコ(BBDC4)は0.75%安、イタウ・ウニバンコやサンタンデールも下げた。ただし、国営銀行BB(BBAS3)はわずかに0.09%高と9営業日中8日続落から一息ついた。
航空セクターでは、エンブラエル(EMBR3)が4.63%高。中でも注目されたのはゴル航空(GOLL4)で、米国での再生手続きが完了したことを受けて11.82%高と急騰。アズール(AZUL4)も同様の再建プロセス入りを背景に2.08%上昇した。
今後の焦点:物価統計と財政協議の行方
市場の関心は、9日に発表予定の5月のIPCA(消費者物価指数)へと移る。インフレの鈍化が期待されており、中央銀行発表の「フォーカス」レポートでも2025年の物価見通しは引き下げられた。ただし、短期的には引き続きブラジリアでの税制・財政協議と、米中通商対話の行方が相場の方向性を左右しそうだ。