【10日の市況】Ibovespaは前日比0.54%高の13万6,436.07ポイント=インフレ指標とペトロブラスが牽引
6月10日(火)、ブラジルの株式市場は安堵感に包まれ、代表的株価指数Ibovespaは前日比0.54%高の13万6,436.07ポイントで取引を終えた。前日まで4営業日連続で下落していた同指数は、約737ポイントの上昇で反転に成功。一時は13万7,369ポイントまで上昇したものの、午後にかけてはやや伸び悩み、終盤にかけて市場では一時「反発失敗か」との懸念も広がったが、最終的には上昇を維持した。
背景にあるのは、5月の全国消費者物価指数(IPCA)が市場予想を下回る穏やかな内容だったことだ。証券会社XPによれば、特にガソリン価格と耐久消費財価格の下落が全体の押し下げ要因となった。同社は今回の結果が、ブラジル中央銀行(Copom)が来週の金融政策決定会合で政策金利(Selic)を現行の14.75%で据え置くとの見通しと整合的であると分析している。
インターバンクのチーフエコノミストであるアンドレ・ヴァレリオ氏も、「食品価格は季節要因により今後も下落圧力が続くとみられるほか、国際市場でのコモディティ価格の軟化もガソリン価格の一段の引き下げにつながる可能性がある」と述べ、加えて、「金融引き締めの効果が実体経済に波及し始めており、需要由来のインフレ圧力も和らぎつつある」との見方を示した。
一方、米国市場も堅調な動きを見せた。ロンドンで開催されている米中貿易協議に対する期待感から、米主要株価指数はそろって上昇。Trivariate Researchの創業者アダム・パーカー氏は米CNBCの取材に対し、「対話があるだけでも前進であり、進展があると多くの投資家が期待している」と語った。
しかしながら、6月11日に発表予定の米国5月の消費者物価指数(CPI)を控え、市場には慎重なムードも残る。こうした中、対ドルで一時大きく上昇していたレアルは上げ幅を縮小し、最終的に0.14%安の1ドル=5.570レアルで取引を終了した。一方、債券市場ではIPCAの結果を受けて利回りが全般に低下し、金利先物(DI)はカーブ全体で下落した。
また、前日に市場を揺るがせた金融取引税(IOF)をめぐる動きも引き続き注目された。政府は先週末、議会指導部との協議を経て、IOF税率引き上げに関する政令を「再調整」する方針を示したものの、市場には依然として警戒感が残っている。インターバンクのチーフエコノミスト、ラファエラ・ヴィトリア氏は、「政府の対応は金融セクターや現在非課税となっている固定収益投資の利回りに対する課税強化に重点が置かれており、資本コストのさらなる上昇につながる」と指摘した。
こうした中、財務相フェルナンド・ハダジ氏は10日、政府が検討している新たな税制改革案を明らかにした。それによれば、金融投資から得られる収益に対する所得税(IR)の税率を、2026年以降に17.5%の単一税率とすることを提案する。さらに、現在15%に設定されている「資本配当(JCP)」に対する源泉徴収税率も、20%へと引き上げる方針だ。
この「再調整策」は、5月末に実施されたIOF増税の財源を補う目的で提示されたもので、政府は今週中にも大統領府に提案を提出する予定。ハダジ氏は記者団に対し、「今回の改革は日常生活には影響せず、むしろ構造的かつ公平な税制度の実現に向けた第一歩である」と述べた。
この新税制が実現すれば、定期預金(CDB)や国債(Tesouro Direto)など、現在期間に応じて15〜22.5%の範囲で課税されている商品についても、全て17.5%の単一税率に統一される見通しだ。加えて、これまで非課税だったLCI・LCA・CRI・CRA・FII・Fiagroといった「インセンティブ付き商品」についても、5%の税率が適用される予定とされる。
市場関係者の間では、これらの改革が長期的には投資環境の透明性向上につながる一方で、短期的には資本市場に対する慎重姿勢を強める可能性があるとの見方もある。
また、同日公表された世界銀行の最新経済見通しによれば、2025年および2026年のブラジルの実質GDP成長率は安定的に推移すると予測されており、国内企業株への期待感も支えとなった。
個別銘柄では、鉄鉱石価格が中国で続落する中、ヴァーレ(VALE3)が0.68%高と5日続伸。ペトロブラス(PETR4)は、米中貿易協議への期待と原油価格上昇を背景に3.02%高と大幅上昇した。中小石油会社も堅調で、Petrorecôncavo(RECV3)は3.49%、Brava(BRAV3)は3.29%、PRIO(PRIO3)は1.00%上昇。
一方、銀行株は引き続き軟調で、ブラジル銀行(BBAS3)は0.87%安と、過去15営業日で12度目の下落となった。小売株は落ち着いたインフレ指標を受けて上昇。マガジン・ルイザ(MGLU3)は0.21%高、ロジャス・ヘンネル(LREN3)は2.35%高となった。
ただし、市場の不安定さは依然として残っており、投資家にとっては「一日の反発すら貴重な勝利」と映る状況が続いている。政府の財政改革と金融政策の動向をにらみつつ、今後の展開が注目される。