「内助の功」ならずのミシェレ夫人

4年に一度の大統領選まで2カ月を切り、来週からテレビとラジオで選挙放送が始まる。この時期になると「いよいよ大統領選がはじまるな」という気がしてくる。
選挙放送開始に合わせて大統領候補たちの選挙キャンペーンも盛んになる。候補者らは有名人の応援演説を受け、選挙戦を盛り上げるが、応援における活躍が期待されるのが「候補者の妻」だ。
選挙における「候補者の妻」の存在は重要で、「政治のことはよくわからないから」と尻込みするタイプの女性有権者の中には、「奥さんが感じのいい人だからこの候補者に入れる」という行動をとる人も決して少なくない。
そうした中、今回の選挙で良くない意味で気になるのが、ボルソナロ大統領のミシェレ夫人だ。彼女はボルソナロ氏の就任当初、軍出身らしく男らしさを強く主張しようとする夫に対し、国民に対しそのイメージを和らげる親しみやすい存在になることを期待された。年齢も30代と若く、ボルソナロ氏の支持が薄い10〜20代への架け橋になることも望まれていたように思う。
ただ、任期中にそうした国民への働きかけを行った印象はなく、むしろ「疑惑の小切手受け取り事件」などでネガティブな印象を持たれている。
キャンペーンで爽やかにふるまって夫を助けるミシェレ氏だが、残念ながら効果はいまひとつ。それどころか、むしろ夫のイメージを悪くしてしまっている。
イメージ悪化の原因は、彼女が「熱心な福音派」という点に絞った応援活動をしているためだ。彼女は壇上に上がっては「夫は神によって大統領に選ばれた」「連邦政府は悪魔に対抗するために清められたのだ」などの発言を行っている。
こうした発言は、狂信的な福音派を盛り上げるには適しているが、そうでない人にとっては「何を芝居がかった物言いを」と失笑されかねない。ボルソナロ氏の不支持率は、支持率を長いこと上回っている。「失政しておいて、なにが神に選ばれただ」と、神経を逆なでされる人も少なくないだろう。
それに「ボルソナロ氏が神に選ばれた人物」と信じているような人は、ミシェル氏が改めて主張しなくとも、もうボルソナロ氏に投票する事を決めている人であろうから、今さら票のプラスになるとも思えない。もっと、建設的なことで夫に貢献すべきだと思うのだが。(陽)