《記者コラム》与えたものこそが残る=ペレの葬儀が改めて示したもの

2~3日に行われた「サッカーの王」ペレの通夜と葬儀は、死した後も残るものはその人が得たものではなく、与えたものであること、本当に大切なものは目に見えないことを改めて示した。
ペレは現役時代、引退後を通じ、多くの人に感動や勇気、平和を与えてきた。世界各国の新聞が12月30日付の一面かつ写真入りでペレの逝去を報じた事はその事の証明だ。
通夜の会場には大勢の参列者があり、ペレのプレーを初めて見た時の感動やラジオにしがみついて試合の様子を聞いていたこと、幼い時にペレと撮影した写真が唯一無二の宝物であること、サントスファンではないがペレの大ファンだったことを語っていた。
遠路はるばるやってきた人、一目だけでも会いたいと4~5時間も列で待つ人、棺を載せた消防車両の傍らを離れずにパレードに付き添う人など、年齢や性別、国籍まで超えた参列者達の姿は世界中に発信された。
ペレが名声を得ることや富を得ることに執着し、過去の栄光の上に胡座をかいていたら、これほどまでに愛されただろうか。3日の市内パレードで最も感動を呼んだ場面は、ペレの生前の意向で実現した母のセレステ氏の住まいの前での一時停止と、100歳で外出もかなわぬ母親に代わってベランダに現れ、会衆への感謝を告げた妹のマリア・ルシア氏の姿だった。
多くの人々に思いやりや愛を示し、感動を与えてきたペレ。サッカーの価値を高め、内戦さえも止め、平和を作り出して来たペレが病の床に伏しているとの報は祈りの輪を作り出し、逝去の報は世界中の動きを止めた。
リオ市は3日、ペレが1千点目を決め、クラブ選手権の決勝を2度戦ったマラカナン・スタジアムを囲む通りの名を「ペレ大通り」または「王ペレ大通り」と改名する事を決めた。サンパウロ市市長は2日、自転車広場に建設中の多目的体育館にペレの名をつけると発表した。FIFA(国際サッカー連盟)会長の言葉が実現すれば、世界各地に彼の名を冠したスタジアムも出現するはずだ。
私利私欲に駆られる事なく、常に謙虚で前向きだったペレの姿や業績は、今後も語り継がれていくだろう。通夜の会場やその周辺には「永遠の王」と書かれた横断幕が見受けられたが、この言葉が真実である事は世界中の動きが証明しているに違いない。(み)