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《記者コラム》カサビのPSDが大躍進を遂げるまで

2024年10月11日

カサビ氏(Facebook)
カサビ氏(Facebook)

 6日の統一地方選で勝ったのはルーラ大統領でも、ボルソナロ前大統領でもなかった。勝者は、ジルベルト・カサビ氏。中道政党・社会民主党(PSD)党首だ。

 その勝ち方は圧倒的だった。PSDは全国市長数で1位、市会議員数で3位。この数字はどちらも5位だったボルソナロ氏の自由党(PL)、同じくどちらも9位だったルーラ氏の労働者党(PL)をはるかに上回る数字だ。
 今回上位を占めた4つの政党はPSDに民主運動(MDB)、進歩党(PP)、ウニオンといずれも中道政党。現在のルーラ政権もこの4政党から大臣を迎え入れ、ボルソナロ政権もこれらの政党に連立を求めていたものだが、その強さがわかりやすいまでに今回の選挙で表面化している。
 中でもPSDの存在感は、この4党の中でも目立ち始めている。コラム子は同党の結党当時を覚えているが、まさかこんなに影響力のある政党に育つとは思わなかった。2011年当時、カサビ氏はウニオンの前身・民主党(DEM)に所属し、聖市長を務めていたが、PSD結党のため独立。市長としての支持率はそこまで高くなく、党の方向性も今ひとつ見えなかった。
 結党当初は党員に共通した党派性は見えにくく、左寄りの政治家もいれば、かなり保守よりの者もいる。印象としては老舗政党のMDBがもう一つできたような感じだった。党活動の過程では、元歌手のフロルデリス元下議が夫殺害事件を起こすというスキャンダルもあった。
 そんなPSDに現在に至るイメージができ始めたのは2021年のことだ。上院議長のロドリゴ・パシェコ氏、同年上院のコロナウイルス議会審議委員会(CPI)議長のオマール・アジス上議、2023年に三権中枢施設襲撃事件の両院CPI議長を務めたエリジアネ・ガマ上議が「良識派」としての印象をアピールした。
 彼らは左派のように女性や人種、LGBTの問題を声高に叫んだりはせず、かといって右派のように少数派に対して攻撃的な物言いをおこなったりせず、専制主義的な振舞いもとらない。彼らは世間にPSDは民主主義的なモラルに則った常識ある行動をとる政党との印象を与えた。
 その後PSDは、聖州で民主社会党(PSDB)の御家騒動が起きた際に、大量に発生した離党者の受け皿となった。カルドーゾ元大統領の時代から紳士的な保守姿勢で知られたPSDBだったが、方向性をめぐって内部分裂。そこをカサビ氏が拾い上げPSDはさらに強化されたのだ。
 カサビ氏は現在、国政でルーラ氏、聖州でタルシジオ・デ・フレイタス知事を支持している。タルシジオ氏には2026年大統領選出馬の噂が濃厚。その際にカサビ氏がどういう立場をとるか。「国政のフィクサー」にもなりつつある。(陽)


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