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《記者コラム》新年早々にも毒殺事件=家族の絆はどこに?

2025年1月9日

毒を持った嫌疑で継父を逮捕と報じる8日付G1サイトの記事の一部
毒を持った嫌疑で継父を逮捕と報じる8日付G1サイトの記事の一部

 年末年始は家族が一堂に会し、クリスマスや新年を祝うのが通例のブラジル。だが、この年末年始にはリオ・グランデ・ド・スル州とピアウイ州で祝いの席に付き物の菓子や料理に毒を盛る事件が起き、家族や親族を失う悲しみに暮れる家庭が続出した。
 リオ・グランデ・ド・スル州トーレスで年末に起きた事件は、嫁が買い置きの小麦粉にヒ素を混入したことを知らない姑がケーキを作り、それを食べた家族6人中3人が死亡、3人が入院したというもので、本紙「ブラジル万華鏡」コーナーでも取り上げた。嫁は姑の家でヒ素について調べていたことが判明し、5日に逮捕されたが、犯行を否定している。
 他方、ピアウイ州の事件では、大晦日に準備した年越しの食事を食べた家族が新年の挨拶を交わした後、何事もなく就寝したが、元旦の昼に残っていた料理を食べた直後に体調を崩して入院した。
 まだ寝ていて昼食は取らなかった女家長(52歳)は無事だったが、家族7人と隣人親子2人の9人が入院。同日中に18歳の息子と1歳8カ月の孫の2人が死亡。17歳の娘と53歳の夫、隣人親子の4人は退院したが、4歳の孫が6日に、子供2人を亡くした後も入院が続いていた32歳の娘が7日に亡くなり、死者は4人となった。32歳の娘さんの子供で4歳の女児はまだ入院している。
 警察は当初、ある夫婦が昼食前に配って回った魚による中毒を疑ったが、その後の捜査で、ブラジル北東部の定番ご飯料理「バイアン2」に、殺鼠剤などにも使われ、販売が禁止されている有毒なテルブフォスが混入していたことが判明。皆が就寝していた間か昼食前に混入させることが可能だった人物を特定するための捜査が進められ、8日朝、女家長の夫で息子達にとっては継父にあたる男性が逮捕された。
 逮捕後の夫の供述内容などは報じられておらず、動機は不明だが、7日に亡くなった娘さんは23年8月にも毒入りカシューナッツを食べた8歳と7歳の息子を失っている。この時は、子供達に自宅に入り込まれた隣人が、庭にある果実を盗まれたことに立腹して犯行に及んだとして殺人容疑で逮捕された。
 元旦朝、善意で食料キットや魚を配っていた夫婦は、犯人扱いされ、脅迫なども受けていたようだが、喜びと愛を分かち合うクリスマスや新年に家族殺害を企てた人達がいたという事実や子供の悪戯が許せなかった隣人の存在は、人の心の暗闇を映し出す。
 家族や地域住民同士の絆を大切にする気持ちは国が違っても変わらないと思っていたのに、人の心の暗闇は人類共通のものであることも思い知らされた年末年始。ピアウイ州の事件では、再婚相手が息子達を殺したかも知れないという事実に直面し、入院中の孫の安否にも心が揺れているであろう女家長の胸の内を思うと更に辛くなるが、孫の回復と、残された娘や孫の世話をするための強さが彼女に与えられることを願わされる。
 ウクライナやイスラエルを巡る紛争も先が見えないが、暗さの残る中でも前を向き、和解成立を求めて歩み続けられるようにも祈りつつ。(み)


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