《記者コラム》高齢者の転倒を防ごう=平衡感覚テストなどで

階段や屋根から落ちたり、路上の凸凹や居間のカーペットにつまずいたりと、高齢者の転倒は日常茶飯事で、同年齢層の主な死因の一つだ。
先日も、買い物の帰りに、散歩に出た際に歩道に上ろうとして倒れ、肘などをすりむいた男性が息子さんに手を引かれて帰宅するところに行きあわせた。転倒によるケガや骨折で運動能力が低下したり、寝たきりになったりする例や、打ち所が悪くて死亡する例もある。高齢者の転倒は公衆衛生上の重大問題でもある。
こうした転倒を防ぐため、高齢者には定期的な健康診断と共に平衡感覚や運動能力のテストを受けることが勧められている。リベイロン・プレットのサンパウロ大学医学部(FMRP―USP)バランス評価・リハビリテーション研究所(LARE)によると、両足を揃えた状態や片足を少し前に出した状態、片足をしっかり前に出した状態、片足立ちで10秒間静止するというよく使われるテストは、時間が短すぎ、平衡感覚や可動性の問題を特定するのには不十分だという。
同大医学部付属クリニカス病院リハビリテーションセンター平衡障害外来クリニックの医師でLAREコーディネーターのダニエラ・クリスチーナ・カルヴァリョ・デ・アブレウ氏によると、平衡感覚や運動能力のテストは片足をしっかり前に出した状態と片足立ちの二つだけでよく、静止状態を30秒ずつ保てれば、平衡感覚や運動能力は維持できているといえるという。
これは、リベイロン・プレット市やサンパウロ市及びその周辺地域に住む、60~89歳の人153人を対象に行った調査で確認できたことで、保健衛生関連の雑誌にも報告されているという。
LAREは、従来のテストと30秒間静止するテストの両方を受けた被験者を6カ月後に転倒した人と転倒しなかった人に分けて分析。転倒した人達は、片足立ちで平均10・4秒、片足を前に出した状態で17・5秒静止できていたのに対し、転倒しなかった人達は、片足立ちで17・2秒、片足を前に出した状態で24・8秒静止できていたという。
これは、10秒間では将来の転倒を予測するには不十分であることと、2種類の姿勢でのテストは転倒リスク予測に効果的で、適切な介入の選択や管理を行うためのツールとなることを示す。アブレウ氏は、この方法は簡単で場所や時間もとらない上、転倒リスクを低・中・高に階層化することも可能なため、転倒回避や転倒による傷害の治療費削減のための予防措置を講じることができると説明。ただし、不均衡は筋力低下や感覚障害、関節の問題などと関連している可能性があり、より詳細な評価が必要とも強調している。
今は平気と思う人も、転倒回避は共通の課題であることを認識し、筋肉量を保つ工夫や運動継続などを心掛けたい。平衡感覚や体力、運動能力の低下は成人病同様、声も立てずにやってきて人々を驚かせるから。(み)