《記者コラム》「米国第一主義」への懸念=思い出す手足と口の例え

米国のトランプ大統領が4日夜に行った施政方針演説やその前に行った関税引き上げなどを見、同氏が言う「米国第一主義」への懸念がますます強まった。
政治に関することは、もっと論が立つスタッフや左派や右派の動向を追うのが好きな人達に任せているので、コラム子が取り上げることは少ない。今回テーマとして取り上げることを決めたことで、それだけ米国や世界はこのままで大丈夫なのかと考えさせられていることを自覚した。
トランプ氏は「アメリカンドリームの再生」と題した演説を行い、就任後の成果を強調した。成果の中には世界保健機関(WHO)からの脱退やパリ協定離脱も含まれていた。トランプ氏が「バイデン政権がやった○○を覆した」「○○を廃止した」などと語るたびに拍手を送る議員達がいることにも不安感が募った。
確かに、現在のトランプ氏は前政権より迅速かつより確信を持って行動しているように見える。だが、自分達と異なる人達を悪者扱いし、国と国、国民同士を対立に導くような態度や物言いが独りよがりに見え、本当に米国民のためになるのかと考えてしまう。
他国を助けるために経済的な負担を負うことは米国民の利益を損なうとの考えは正しいのだろうかとも思うし、米国の脱退でWHOが置かれた窮状も気にかかる。アルゼンチンのミレイ大統領は米国を真似、WHO脱退を表明している。
2020年に発生し、現在も感染者や死者が出ている新型コロナのパンデミックの事例は参考に値する。予防接種用ワクチンの開発、接種開始で感染者や死者の発生にブレーキがかかったが、一部の国や地域だけで接種が行われていた時期は感染拡大の速度が落ち難かった。これは世界規模の取り組みが必要な事態が起きた時、その枠外に留まる国があることがリスクであることを示している。
パリ協定離脱も然りだ。気候変動や地球温暖化の問題は地球号としての一体感を持ち、世界規模の取り組みを行わなければブレーキはかからない。だが、トランプ氏はパリ協定離脱を宣言。石油を掘って掘って掘りまくるとも強調した。温室効果ガス排出量2位の米国が自国産業や国内のエネルギー供給を優先し、化石燃料の利用に拍車をかける一方で、電気自動車の開発・生産などに必要なレアアース獲得に血眼になっていることが何を意味するかは心ある人ならわかるはずだ。

相互関税という前提の下で行われる米国の関税引き上げに対しては、報復措置として関税引き上げを始める国が増え、トランプ氏の持論に疑問を呈する国も出ている。関税引き上げにより、米国製自動車などは20%超値上がりするとの予想も出ているし、他国の報復措置で米国産品輸出に影響が出始めれば、米国内でのインフレ高進や産業の停滞、雇用減が起き、国民の心も離れ得る。
一連の動きを見て、会員数が比較的多く、経済的にも力があった福音教会の牧師が教団や中小教会には有力教会による支援が必要と考えて教団離脱を思い止まった話を思い出した。
また、手や足が「あなたは働きもせず、おいしいものだけ食べている」と口に文句を言い、「あなたのためには働かない」と言って動くことを止めたら、体全体が空腹や栄養失調に苛まれ始め、手や足も動けなくなったという例え話も思い出された。
どんどん力を失って思うように動けなくなった手や足は、「私が食べ物を食べることで体全体の健康が保たれ、あなた達も動くことができたのです」という口の言葉に、全体で一つであり、誰が欠けても身体は動かなくなることを認識。口に謝り、全身のために動き始める。
現在のようにグローバリゼーションが進んだ世界では自国の利益や自国民だけを考えるのは間違いだとトランプ氏やスタッフが気づき、1日も早く方向転換できるよう、願わされている。(み)
(1)https://nordot.app/1269886693061902639?c=768367547562557440
(2)https://www.bbc.com/portuguese/articles/c20drygrjl1o
(14)https://www.estadao.com.br/economia/o-que-sao-tarifas-nos-eua-e-como-funcionam-nprei/ 4日
(15)https://www.gazetadopovo.com.br/economia/precos-carros-novos-tarifas-trump-juros/ 4日