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《記者コラム》祝オスカー受賞!『アイム・スティル・ヒア』=ブラジル映画がさらなる大賞を獲得するには?

2025年3月7日

オスカー像を手にするヴァルテル・サレス監督と主演のフェルナンダ・トーレス(RS/Fotos Publicas)
オスカー像を手にするヴァルテル・サレス監督と主演のフェルナンダ・トーレス(RS/Fotos Publicas)

 先週の当コラムで行ったオスカー予想がかなりの割合で的中し、我ながら驚いている。コラム子は「国際長編映画賞なら『アイム・スティル・ヒア』が勝つチャンスがある」と予想したが、その通りとなった。全13部門にノミネートされるなど大本命と目された「エミリア・ペレス」は、監督や主演女優の舌禍スキャンダルが影響し、「アイム―」に軍配が上がった。
 主演女優賞については「フェルナンダ・トーレスの受賞は難しい」と予想。実際には大本命のデミ・ムーアが受賞を逃し、映画「アノーラ」の新人女優マイキー・マディソンが受賞するというサプライズな結果になった。驚きの結果ではあるが、彼女が追い上げているとの情報を耳にしていたからその勝利の可能性もコラム内で指摘している。
 そして作品賞は前評判が揺らぐことなく「アノーラ」が受賞した。
 いずれにせよ、「アイム―」はブラジル映画にとって大きな扉を開き、後続の映画人たちに自信と今後への夢を与えた。目の前の国内市場だけに訴えるのではなく、もっと広い視野を持った普遍性のある作品の制作の重要性も学んだことだと思う。
 だが、同時にこうも考えた。「『アイム―』がもう少し早くキャンペーンを展開していたら、さらにもっと規模の大きな賞争いができたのではないか」と。
 そもそも「アイム―」がオスカーを狙い始めたのは昨年9月のヴェネツィア映画祭で脚本賞を受賞した時。その時に「フェルナンダの主演女優賞は狙えるかも」との声も上がったが、まだ「夢の話」といったところだった。
 「アノーラ」や「エミリア・ペレス」などは昨年5月に行われたカンヌ映画祭で好成績を挙げた後から周到にキャンペーンを行い、それで賞争いを有利に進めた。「アイム―」の場合は、「オスカー2部門にノミネートできたら」くらいの手あいだったところが、ゴールデン・グローブ賞でフェルナンダがまさかの主演女優賞を受賞し、そこから本気になり追い上げた、といったところだ。
 もう少し早く本気になっていればフェルナンダのオスカー受賞、さらに監督賞や脚色賞のノミネートもありえたかもしれない。国際公開後の最終的な評判はそれにふさわしいものだったのだから。
 なのでこの先、もし手ごたえのある作品が出てきたならば、今度は初めから自信を持ってキャンペーンを展開すれば、さらに大きなオスカー受賞が期待できるような気がする。
 それにしても、受賞の瞬間の国民の喜びぶりはカーニバルから話題を奪うほど大きなもので、そのはしゃぎぶりは、ワールドカップで獲得した5つのトロフィーの横に一つのオスカー像を並べた歓喜の画像を拡散する様子などからも見られる。そうした姿を見るにつけ、コラム子も自分のことのように嬉しさを感じる。(陽)


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