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JICA協力隊員リレーエッセイ=ブラジル各地から日系社会を伝える(55)日伯結ぶアニソンダンス=ブラジル日本文化福祉協会=夏目幸奈

2026年4月9日

活動について生徒たちと実演を交えて発表している様子
活動について生徒たちと実演を交えて発表している様子

 私はブラジル日本文化福祉協会に所属し、アニメソングに合わせて踊るダンス「アニソンダンス」の指導を通じて、日本文化の発信と青少年の育成に携わっています。サンパウロ市内での定期クラスの他、学校やブラジル各地の祭りや盆踊り、アニメイベントと連携したワークショップを開催したり、生徒たちが成果発表できる場を準備したりしています。

 ブラジルの若者が最も親しみやすいアニメを入り口に、日本をより身近に、そして奥深い伝統や文化まで知ってもらいたい。そんな想いで活動しています。

 また指導では、技術よりも楽しむことを優先しています。アニソンダンスとは、アニメやキャラクターの特徴、歌詞を表現したり、リズムに合わせて踊ったりと、正解も間違いもない、ジャンルや経験にもとらわれない自由なダンスです。

 振付には、歌詞の意味を投影した動きを多く取り入れ、ポルトガル語訳を伝えています。歌詞の背景にある物語を共有することで、日本語学習や日本文化への理解を深めるとともに、言語や文化以前に、ダンスという身体表現を通じて、子どもや青少年の豊かな感性や心を育むことも大切な使命だと考えています。

 活動開始当初はアニメ人気の高さに反して、具体的な活動への結びつきに苦戦する時期もありましたが、地道な実績を積むうちに、今では多くの地域からお声がけをいただけるようになりました。

 出張でブラジル各地を巡る道中、整備されていない赤土の道が続く小さな町々を通り抜けます。そこにはレンガ造りのブラジルらしい家屋が立ち並び、先住民の居住エリアでは各家庭からゴミを燃やす煙が立ち昇っていました。

 こうした光景を見て、地域ごとに異なる伝統や暮らしが息づく、ブラジルの圧倒的な多様性に心を揺さぶられました。ブラジル各地には栄えた大都市もたくさんありますが、それ以上に、都会とはまったく異なる素朴な暮らしも多くあることを知るたび、自身の視野が広がっていくのを実感します。また、ホームステイで現地のリアルな生活を体験できるのも貴重な機会です。

所属するBunkyo青年部の集会の様子
所属するBunkyo青年部の集会の様子

 各地の日系団体では、移住開始から118年が経過した今、日系・非日系を問わず地域の人々に広く参加してほしいという考えをよく耳にします。実際に非日系の方々が過半数を占める団体も珍しくありません。言葉や文化が違っても、日本のアニメをきっかけに自ら日本語や伝統文化を学ぼうとするブラジルの人たちに出会うたび、日本人として嬉しい気持ちになります。

 ブラジルでの生活は、日本にいた頃には当たり前すぎて気づけなかった自国の素晴らしさを再認識させてくれました。街の綺麗さや秩序、治安の良さ。そしてブラジルの日系人が移住当時の文化を今も大切に守る姿を目の当たりにし、私自身も、日本で廃れつつある、畳や織物などの伝統文化や美しい田園風景などを守っていきたいと強く思うようになりました。

 アニソンダンスはあくまできっかけに過ぎません。最も親しみやすい形で日本に触れる機会を提供し、その先にある日本そのものや、マナー、伝統文化への深い理解へと繋げていく。結果として、ブラジルの対日理解の向上に貢献できていれば幸いです。

 同時に、現在は私自身がブラジルで暮らす身として、各地の豊かな文化に触れる貴重な機会を大切にし、自身の心を豊かにしていきたいと思っています。

 こうした草の根の交流が、日本とブラジルがお互いの文化を深く尊敬し合い、学び合う真の国際交流に繋がることを願っています。


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